第17話



 宝石店は相変わらず閑古鳥が鳴いている。

リンをモデルにして装飾品を載せた小冊子のおかげで一時期は繁盛したが、それ以降はいつものように冷やかしのお客が訪れては去って行く。


 流石に丸山は疲れを隠せなくなって来ている。

それが店全体に感染症のように広がっているのか、店内は段々と活気がなくなって、空気さえもがどんよりとしているように思える。


「丸山君? 何してはんの?」


「外回りをしようと思いまして」


「悪いことやないと思うけど、ワイには気分転換のようにしか思われへんねんけど?」


「そうかもしれません、でもじっとしていられなくて」


「まぁ、そないに焦っても事態は大きく変わるわけでもないやろ」


「それはそうですが」


「珈琲、入れてや。もう少し落ち着けや」


「はい」


「外回りは珈琲飲んでからでも遅うないやろ?」


「ええ、分かりました」


 丸山は、外出の用意を途中でやめて珈琲の用意をする。

その間に、ぺペンギンはお腹のポケットから煙草を取り出し火をつけた。

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