迷子探偵
ある有能な探偵がいたが、ほとんどつねに迷子だった。ある時は島根のどこかの駅の待合室にいた。新大阪は中国地方にあると思ったのだ(少し前まで中国地方は中国のどこかだとも思っていた)。待合室にいた一ヶ月のあいだに小さな事件を四つ解決した。その報酬で弁当や菓子を買い生活したのだ。
またある時は松山を目指して歩いていた長野の田舎道で靴底がはがれ落ち、助けを求めた村の旧家で起きていた陰惨な殺人事件を解決した。県警は探偵を表彰しようとしたが、目を離すともういなかった。
歴史博物館の再現展示で、バラ園の東屋で、サナトリウムの食堂で、遊園地の迷子センターで、バラエティ番組の楽屋で、探偵は事件を解決し続けた。噂を聞いた人々が各地から探偵を呼び寄せようとしたが、探偵が彼らのもとに辿り着くことは決してなかったのである。
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