▼【第三十話】 覚悟を決めます。
たこ焼きはなんとなく食べたくなかったので、昨日の余っている具材でお好み焼きを作る。
余りかわらないけど、タコ焼きよりはなんだか食べれる気がする。
液状のまま一日放置してしまったけど大丈夫だろうか?
具材は海老とウィンナーでいいか。せめてキャベツも欲しかったがないものは仕方がない。こういうお好み焼きも、まあ、悪くはない。
ただやっぱりなにか味気ない。
蛸は刺身で食べた。美味しい。流石天然国産もの。
が、流石に量がある。冷凍しないとダメかもしれない。
ため息が止まらない。
遥さん対しては何も怒ってはいない。
僕が彼女に怒ることなど何一つありはしない。
そもそも、あんな遥さんを見てしまえば、心配こそすれ怒れるはずもない。
何があったんだろうか。僕にはそれも分からない。
家族の不幸とかでなければ良いんだけど。
少なくとも電話が来るまでは、いい雰囲気だったとは思う。
まだ一日しかたってはないが、あれ以来レインも来ない。
僕からもどういう訳か、聞きにくく感じてしまう。
けど、上手くやれていたというのも、やっぱり僕の思い違いで、本当は遥さんに呆れられるような事をしていたかもしれない。
父さんや母さんの話は、やっぱり重かったんだろうか?
どちらにせよ、一友人でしかない僕がどうこう言えることはない。
それを思うと挫けそうになる。
心の奥底で、なら一歩踏み出して恋人になればいい、と声高々に言っている僕がいる。
遥さんも、もう一度口説いてって、あの時は、恐らく冗談だろうけども、言っていた。
遥さんをもう一度口説く。僕としては一度も口説いたつもりはないのだけれども。
なら、やってみるしかない。
僕にはもうその選択ししかない。
遥さんを諦める、そんな選択肢は僕にはもうなくなっている。
少し食べすぎたと思いつつも、色々後片付けをしていたら、かなり遅い時間になってしまった。けど、ゲームにログインする。
マッダーさん、平坂さんからメールが来ている。
それを見て見る。
内容を要約すると、遥さんと先ほどまで一緒にいて飲んでいたらしい。しかも、遥さんはさっきまで泣いていたらしい。昨日のことは悪いと本人も思っている。後、多分だけど遥さんも僕のことをかなり気にいっていると思う、と書かれている。
そのメール一つでさっきまでの憂鬱な気分が全て吹き飛んでしまう。
遥さんが僕を気に入ってくれている。なんて素敵な良い文章なんだ。花丸をあげたくなる。
けど、遥さんはさっきまで泣いていた。
やっぱり知り合いなどにご不幸でもあったのだろうか。
それは心配なんだけれども、僕のことを気にいっている、という一文が僕はどうしてもうれしくて仕方がない。それだけでニヤニヤしてしまう。
けど、メールの最後に、遥さんに何があってもどんなことになっても覚悟を決めて許してやってほしい、って書いてあった。
どういうことなんだろうか。
最後の文を見ていると、僕はまた不安になる。
僕は、わかりました、覚悟を決めます、とだけ返事をする。
ギルドチャットでは、昨日急に帰ってしまった遥さんのことでまだ盛り上がっている。
あらぬ憶測が色々と飛び交っている。
皆には感謝している。
けど、後は自分でどうにかして見せる。いや、僕がどうにかしなければいけないんだ。
僕も覚悟を決めたんだ。
僕はゲームのIDとパスを書き込み、狩りに行くときに使ってください、と一文を付けてゲーム内のメールで平坂さんに送る。
返事を待たないままログアウトする。
もうゲームには戻らない。頼らない。逃げ場所にしない。
もし再開するときは、逃げ場所ではなく、心から楽しむために戻ってくる。
今は、一分一秒たりとも時間を無駄にできない。
すべてを遥さんのために使いたい。
そう思うと、ゲーム、というか平坂さんからの情報が聞けなくなるのは失敗だったのかもしれない。
いや、僕は覚悟を決めたんだ。
すべてを捧げると決めたんだ。自分の力でどうにかしないといけない。
まずは遥さんの現状だ。平坂さんは泣いていたと言っていた。
心配だ。
でもどうしたらいい? もう皆は頼れない。これからは僕の力だけで解決しないといけない。
とりあえず、レインだ。レインで遥さんに聞いてみよう。
泣いていると聞きました。大丈夫ですか? と、遥さんにレインを送る。
すぐに、ごめんなさい、という文章が、三回連続で送られてくる。
少しの間があって、お詫びに何でも言うことを聞きます。何でもいいです。どんなことでもいいです。と送られてくる。
僕はその文章に茫然としてしまう。
彼女に何があったんだ。余計に心配になってしまう。
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