▼【第二十一話】 水族館は素晴らしい。
僕たちは水族館に着いた。
僕はただ魚を見るだけのものかと思ってたけど、そんなことはなかった。水族館は素晴らしいところだった。
そもそも、そんな大きい水族館じゃないと聞いていたので、どうなのだろう、と思っていたけど僕の心配など意味のないほど素晴らしい場所だった。
水族館をすすめてくれたみんなに感謝しないといけない。
そこは想像以上に幻想的で素晴らしい空間だった。それはもちろん遥さんが一緒だったからかもしれない。
まずはアクアリウムというのだろうか、そう言った水槽が並べられていた場所に出た。
鮮やかに彩られた水槽一つ一つが、その独立した水の中の世界みたいで、それを水槽で切り取られた生き生きとした絵画のように僕には思えた。
それを遥さんにそもまま言ったら、
「田沼さん、詩人みたいですね」
と、言われて笑われてしまった。
ただその笑顔からは嫌な感じはまるで感じなかった。
次に見たのがクラゲだった。僕的には一番気に入ったかもしれない。
薄暗いので何かと落ち着いたというのもある。
ライトアップされたクラゲがとても幻想的で、ずっと見て居られた。
遥さんもクラゲに目を奪われてた。
僕はその横顔も堪能した。ああ、なんて愛しい横顔なのだろうか。
でも、改めて思う。美しい顔だとは思うし、かけがえのない位とても愛しいとも思える。けど、やっぱり今まで僕が好きになって来た異性の顔のタイプではない。
けど、今はそもそもタイプだとかそういった物自体が僕にとっては意味がない。僕には遥さんだけでいいから。それしかいらない。
クラゲを堪能した僕たちは大きな水槽を見た。
そこからサメやエイも見れた。サメを見て遥さんがはしゃいでたっけ。かわいい。
その後小さい水槽をいくつか見て、移動して階を降りると先ほど見た大きな水槽を今度は下側から見ることができた。
ここの迫力はすごかった。
大きな魚や小さな魚が一緒に泳ぐ様は見ていて飽きない。
遥さんはやっぱりサメに、はしゃいでた。
サメが好きなんだろうか?
小さい水族館と聞いていたのにペンギンやオットセイ迄いて、僕たちは十分に楽しむことができた。
遥さんはペンギンもいたく気に入っていたようだ。
少なくとも僕は楽しかったし、僕の目には遥さんも楽しんでくれているように見えた。僕にはそれが嬉しい。
「水族館、初めて来たのですが想像以上に楽しかったです。和歌月さんは楽しめましたか?」
「はい、ペンギンがかわいかったですね、私も飼ってみたいですね」
「ペンギンですか……」
僕はそう言われて少し悩む。ペンギンを飼うのに必要な設備は何だろうか、自宅でも一匹くらいなら飼えるのではないか、そもそもペットショップで売っている物なのだろうか。
それを真剣に考えていると、遥さんにやっぱり笑われる。
「あっ、冗談ですよ? すぐそうやって本気にする」
「す、すいません」
なんだ、冗談だったのか。僕には遥さんの冗談とそうでないものの区別がまるでつかない。
僕はすべて真に受けてしまう。
「このあと展望台で食事ですよね? 時間大丈夫ですか?」
「えっと、そろそろ向かわないとですね」
スマホで時間を確認して僕も少し焦る。もうあんまり時間がない。水族館で長居しすぎた。
「じゃあ、行きましょう」
そう言って遥さんは僕に向けて手を伸ばしてくる。
僕にはそれがどういった意味なのか分からない。
「ああ、もう。こういう時は手を取ってください」
「え? は、はい!」
一瞬これも遥さんの冗談なのかと思ったけど、僕は素直に遥さんの手を取り握った。
柔らかく暖かいその手を。
遥さんも僕の手を握り返してくれた。
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