Frozen ある少女の遺体

卯月 絢華

序文

 明治四十年法律第四十五号 刑法

 刑法別冊ノ通之ヲ定ム

 此法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

 明治十三年第三十六号布告刑法ハ此法律施行ノ日ヨリ之ヲ廃止ス


 死体損壊等

 第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

  

 昭和二十三年法律第百六十八号 少年法

 第一条 この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。


 第二条 この法律において「少年」とは、二十歳に満たない者をいう。

 2 この法律において「保護者」とは、少年に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者をいう。


 第三条 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。

 一 罪を犯した少年

 二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年

 三 次に掲げる事由があって、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年

 イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。

 ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。

 ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。

 ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。

 2 家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。

(省略)

 第五条 保護事件の管轄は、少年の行為地、住所、居所又は現在地による。

 2 家庭裁判所は、保護の適正を期するため特に必要があると認めるときは、決定をもつて、事件を他の管轄家庭裁判所に移送することができる。

 3 家庭裁判所は、事件がその管轄に属しないと認めるときは、決定をもって、これを管轄家庭裁判所に移送しなければならない。


 第五条の二 裁判所は、第三条第一項第一号又は第二号に掲げる少年に係る保護事件について、第二十一条の決定があった後、最高裁判所規則の定めるところにより当該保護事件の被害者等(被害者又はその法定代理人若しくは被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)又は被害者等から委託を受けた弁護士から、その保管する当該保護事件の記録(家庭裁判所が専ら当該少年の保護の必要性を判断するために収集したもの及び家庭裁判所調査官が家庭裁判所による当該少年の保護の必要性の判断に資するよう作成し又は収集したものを除く。)の閲覧又は謄写の申出があるときは、閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び少年の健全な育成に対する影響、事件の性質、調査又は審判の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする。

 2 前項の申出は、その申出に係る保護事件を終局させる決定が確定した後三年を経過したときは、することができない。

 3 第一項の規定により記録の閲覧又は謄写をした者は、正当な理由がないのに閲覧又は謄写により知り得た少年の氏名その他少年の身上に関する事項を漏らしてはならず、かつ、閲覧又は謄写により知り得た事項をみだりに用いて、少年の健全な育成を妨げ、関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は調査若しくは審判に支障を生じさせる行為をしてはならない。


 第五条の三 前条第一項の規定による記録の閲覧又は謄写の手数料については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)第七条から第十条まで及び別表第二の一の項の規定(同項上欄中「(事件の係属中に当事者等が請求するものを除く。)」とある部分を除く。)を準用する。

 第六条 家庭裁判所の審判に付すべき少年を発見した者は、これを家庭裁判所に通告しなければならない。


 2 警察官又は保護者は、第三条第一項第三号に掲げる少年について、直接これを家庭裁判所に送致し、又は通告するよりも、先づ児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)による措置にゆだねるのが適当であると認めるときは、その少年を直接児童相談所に通告することができる。


 第六条の二 警察官は、客観的な事情から合理的に判断して、第三条第一項第二号に掲げる少年であると疑うに足りる相当の理由のある者を発見した場合において、必要があるときは、事件について調査をすることができる。

 2 前項の調査は、少年の情操の保護に配慮しつつ、事案の真相を明らかにし、もって少年の健全な育成のための措置に資することを目的として行うものとする。

 3 警察官は、国家公安委員会規則の定めるところにより、少年の心理その他の特性に関する専門的知識を有する警察職員(警察官を除く。)に調査(第六条の五第一項の処分を除く。)をさせることができる。


 第六条の三 少年及び保護者は、前条第一項の調査に関し、いつでも、弁護士である付添人を選任することができる。


 第六条の四 警察官は、調査をするについて必要があるときは、少年、保護者又は参考人を呼び出し、質問することができる。

 2 前項の質問に当たっては、強制にわたることがあってはならない。

 3 警察官は、調査について、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。


 第六条の五 警察官は、第三条第一項第二号に掲げる少年に係る事件の調査をするについて必要があるときは、押収、捜索、検証又は鑑定の嘱託をすることができる。

 2 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)中、司法警察職員の行う押収、捜索、検証及び鑑定の嘱託に関する規定(同法第二百二十四条を除く。)は、前項の場合に、これを準用する。この場合において、これらの規定中「司法警察員」とあるのは「司法警察員たる警察官」と、「司法巡査」とあるのは「司法巡査たる警察官」と読み替えるほか、同法第四百九十九条第一項中「検察官」とあるのは「警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長」と、「政令」とあるのは「国家公安委員会規則」と、同条第三項中「国庫」とあるのは「当該都道府県警察又は警察署の属する都道府県」と読み替えるものとする。


 第六条の六 警察官は、調査の結果、次の各号のいずれかに該当するときは、当該調査に係る書類とともに事件を児童相談所長に送致しなければならない。

 一 第三条第一項第二号に掲げる少年に係る事件について、その少年の行為が次に掲げる罪に係る刑罰法令に触れるものであると思料するとき。

 イ 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪

 ロ イに掲げるもののほか、死刑又は無期若しくは短期二年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪

 二 前号に掲げるもののほか、第三条第一項第二号に掲げる少年に係る事件について、家庭裁判所の審判に付することが適当であると思料するとき。

 2 警察官は、前項の規定により児童相談所長に送致した事件について、児童福祉法第二十七条第一項第四号の措置がとられた場合において、証拠物があるときは、これを家庭裁判所に送付しなければならない。

 3 警察官は、第一項の規定により事件を送致した場合を除き、児童福祉法第二十五条第一項の規定により調査に係る少年を児童相談所に通告するときは、国家公安委員会規則の定めるところにより、児童相談所に対し、同法による措置をとるについて参考となる当該調査の概要及び結果を通知するものとする。


 第六条の七 都道府県知事又は児童相談所長は、前条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定により送致を受けた事件については、児童福祉法第二十七条第一項第四号の措置をとらなければならない。ただし、調査の結果、その必要がないと認められるときは、この限りでない。

 2 都道府県知事又は児童相談所長は、児童福祉法の適用がある少年について、たまたま、その行動の自由を制限し、又はその自由を奪うような強制的措置を必要とするときは、同法第三十三条、第三十三条の二及び第四十七条の規定により認められる場合を除き、これを家庭裁判所に送致しなければならない。

(以下省略)

 昭和二十二年法律第百六十四号 児童福祉法

 第一条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。


 第二条 全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。

 ② 児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。

 ③ 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。


 第三条 前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない。


 第三条の二 国及び地方公共団体は、児童が家庭において心身ともに健やかに養育されるよう、児童の保護者を支援しなければならない。ただし、児童及びその保護者の心身の状況、これらの者の置かれている環境その他の状況を勘案し、児童を家庭において養育することが困難であり又は適当でない場合にあっては児童が家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されるよう、児童を家庭及び当該養育環境において養育することが適当でない場合にあっては児童ができる限り良好な家庭的環境において養育されるよう、必要な措置を講じなければならない。


 第三条の三 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、児童が心身ともに健やかに育成されるよう、基礎的な地方公共団体として、第十条第一項各号に掲げる業務の実施、障害児通所給付費の支給、第二十四条第一項の規定による保育の実施その他この法律に基づく児童の身近な場所における児童の福祉に関する支援に係る業務を適切に行わなければならない。

 ② 都道府県は、市町村の行うこの法律に基づく児童の福祉に関する業務が適正かつ円滑に行われるよう、市町村に対する必要な助言及び適切な援助を行うとともに、児童が心身ともに健やかに育成されるよう、専門的な知識及び技術並びに各市町村の区域を超えた広域的な対応が必要な業務として、第十一条第一項各号に掲げる業務の実施、小児慢性特定疾病医療費の支給、障害児入所給付費の支給、第二十七条第一項第三号の規定による委託又は入所の措置その他この法律に基づく児童の福祉に関する業務を適切に行わなければならない。

 ③ 国は、市町村及び都道府県の行うこの法律に基づく児童の福祉に関する業務が適正かつ円滑に行われるよう、児童が適切に養育される体制の確保に関する施策、市町村及び都道府県に対する助言及び情報の提供その他の必要な各般の措置を講じなければならない。

(以下省略)


 ※


 お母さん、ごめん。私はもうこの世にいちゃいけない存在なんだ。犯されて、自慰行為をネット上に晒されて、それで友達からの信頼も失った。クラスの男子から暴行を受けて、青痣あおあざまぶたの下にできている。こんな顔、他の子に見せられないよ。もちろん、自傷行為リストカットをしたこともあった。けれども、私の心の傷は癒やされるどころか深くなるばかり。神様、こんな私でも、天国に行けますよね。

 寒い。この時期の夜は、外に出ちゃいけないって聞いていた。でも、苦しまずに死ねるのなら本望ほんもうだ。どうせ誰も私に気付いちゃいない。吹雪で視界が白くなる。手足が凍っていく。もう、手足の感覚なんて無いに等しいんだけど、辛うじて動かすことはできる。できれば、もう少し目立たないところで死にたい。だから、私は公園の遊具のトンネルの中に入った。心臓の鼓動が遅くなる。視界が、ぼやけて見える。天使が、私の元に舞い降りてくる。


 ――こんな私でも、天国に行けるんだ。


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