【更新停滞中】転生した俺は異世界でもゲームがしたい! ~ダンジョンで前世のゲームを布教中!~
物部
王国編
1.01 プロローグ ~高貴な親子喧嘩を観戦中~
「父上はいつもそうです! 僕たちに大事なことは何も言ってくれない!」
叫ぶようにして父親である国王に、不満をぶちまけるのは王子のアレックスだ。
王子だと一目でわかるイケメンだが、今は怒りでその顔が歪んでいる。
国王はアレックスの言葉をヒゲの一本すら動かさずに真顔で受け流す。
「成人していない僕や母上を、それで危険から僕たちを遠ざけているおつもりなのでしょうが、なぜ父上がその危険に対して最前線に立つのですか!?」
普段は表に出さない激情を、父親にぶつけながらもその手は止まらない。
対する国王は沈黙を保ったままゲームを進めて、盤面は最終局面へと向かう。
二人の戦いを見守っている俺にも緊迫した雰囲気が伝わる。
それにしても、なんでこんな親子喧嘩に巻き込まれることになったのだろうか。
誰もが手に汗を握る場面なのに、俺だけは今日を振り返っていた。
◇◇◇
いつものように地下ダンジョンにアレックスが遊びに来たまではいい。
そこにお忍びという形で国王が来てしまい、アレックスと口論になってしまう。
あまりにヒートアップするから、俺は二人を場当たり的にゲームの席に座らせた。
とりあえず、一旦ゲームで時間を稼いで、二人が落ち着くことを祈るしかない。
やや無理やりではあったが、この選択をした俺にグッジョブを送りたい気分だぜ!
普段から<
――<魔物盤>は魔物や人間といった駒を使ったミニチュア版の戦争を行う。
――駒を育てて、個性溢れるオリジナルの軍隊を作って戦っていく。
――プレイヤーの体力が0になったら、ゲーム終了となる。
国王も初めて見るゲームに興味があるみたいなので、チュートリアルとしてまずは好きに遊ばせておいた。
国王が遊んでいる間にご機嫌取りをするように、ススッとアレックスに近づく。
ご立腹中のアレックスに、父親に普段から気持ちが伝わっていないのならば、たまには自分の思う感情をぶつけて話してみろと助言してみる。
わかったと彼が大人しく頷くので、そのときの俺はホッと胸をなでおろした。
国王がゲームを理解したようなので、俺は二人に対戦してみないかと持ち掛ける。
了承してもらえたので、二人のみで対戦が出来るように特別に設定をいじり直す。
そして、戦い《親子喧嘩》の幕が上がってしまう……。
対人戦は初めてのはずの国王が、優勢のままゲームが進んでいく。
普段負けなしのアレックスが初心者に押されている姿に俺は驚いた。
軽く数プレイしただけなのに飲み込みが早い。さすがに一国の王なだけはあるか。
俺も一緒にプレイしたくなるくらいにはワクワクしてしまう。
負けているのが許せないのか、アレックスは怒りをそのままに言葉をぶつける。
先ほどまで大人しかったアレックスは、嵐の前のなんたらと一緒だったのか……。
まさか、ここまでアレックスが鬱憤を貯めているとは思わなかったよ。
彼の境遇は軽く聞いていた。
それが前世の俺に似ていたから助けるつもりで助言したのに、人が変わったように言葉を荒げるとは……。
大人しい人ほど怒ると手が付けられないってのは本当なんだなと、この親子喧嘩を見ながら俺は的外れなことを考えていた。
「父上、お願いがあります」
いよいよ最後の戦いが始まる。その前口上が始まるようだ。
十を過ぎてまだ三年しか経っていない少年の目に映るのは、きっと貴族をまとめて人を動かす立派な国王の姿ではなく、家族を顧みないただの父親なんだと思う。
「私はあと二年で成人となります。私に任される仕事も父上の手伝いの範囲をすでに超えています。だから……」
一人称を言い換えたアレックス。
押されていたはずの彼は、準備が整ったというように落ち着いた口調になる。
彼の盤面には最弱と呼ばれるスライムの駒が神々しく光を放ち、王の風格を備えて威風堂々と一緒に戦う仲間たちを従えて敵を待ち構えている。
「もっと私を頼ってください。それとも、私では力不足ですか……?」
アレックスの切なる願い。親に甘えず、自分を頼ってほしいという懇願。
最弱のスライムを使うことで、『弱い自分でも力になれますよ』と訴えるようだ。
少年が子どもから大人へと成長しようとしている姿を見て、自然と手に力が入る。
だが、それを阻止しようと立ちふさがる敵が彼の盤面に姿を現す。
「あの陣形は……」
アレックスに対して国王が選んだのは、輝く白銀の甲冑をまとう騎士王の駒だ。
味方を強化する魔法を扱う魔術師たちの駒を後ろに従え、戦闘の最前線に立つ姿は孤高の英雄として存在感を放つ。
国王の盤面は『王は孤独であるから強いのだ』と暗に示している。
アレックスはあの盤面を見て、何を思っているんだろうな?
だが、二つの盤面を見比べて、どうしても俺は口を挟まずにはいられなかった。
ゲームとなると、口が滑らかになるのは俺の悪い癖だとは思うが止められない。
<魔物盤>初心者な国王に対して、不敬で一発斬首な言葉を投げつけてしまう。
「アンタの負けだよ、オッサン」
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