幸せの一画目

川上 世普

イノセンス

目が覚めたその一秒後

世界を憎んだ

風船を針で突いたように

破かれてしまった

夢は もう

覚えていない

あまりにも 儚い

描いた世界は脳の電気信号であること

サンタクロースの正体が親であること

そうさせる現実

あまりにも


想い出も褪めて四十九日

規則正しく時刻を告げる

壁掛け時計に 嫉妬した

あの日あのときを貪るように

頁をめくることしかできない

私は もう

色褪せている

あまりにも 淡い

過去と今とを比べること

あの日諦めた未来と比べること

そうさせる時間

あまりにも


心も冷めた六年後

私の心の部屋に住まう

貴方を追い出した

おどけるように

笑って見せた

貴方の姿は もう

見えない

あまりにも 脆い

人は人の記憶に生きること

忘れられたら温度を失ってしまうこと

そうさせる心

あまりにも


私は 私でなくなる

私の好きな貴方も いなくなる

変わっていく

消えていく

いつかはさめる

脆くて 淡くて 儚い

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