第8話 ♡ (らぶ)事件

あの日から私は亡霊の店員さん改め甲斐 紡さんと付き合い始めた。

「紡」

「ん?」

「今日さ…会社で上司に久しぶりに叱られて堪えてるんだよね」

「愛美は偉いよ今日も立派に生きてる」

「でも、こんな当たり前のことも出来ないメンタルだって弱い欠点だらけだよ」

自分で言ってて泣きそうになる。

紡は私を抱き寄せ頭を撫で耳元で囁く。

「今日はもう店仕舞うから2階で待ってて」

私は言われるがまま2階で紡を待つ。

そして2階に上がって来た紡と合流して私は自分の気持ちを紡に吐露し涙を流した。

紡は私を抱きしめて私を撫で私の話を聞いていた。

「…大丈夫、その上司だって口が滑っただけだよ。愛美に嫉妬してるんだ。愛美は気が利くから」

「私そんなに優秀じゃないよ」

「愛美がそう思っても僕にとっては愛美は気が利くいい人だと思うけど」

「…そうなのかな」

「そうなの。さ、もう夜遅いから早く帰…」

「待って!」

立ち上がろうとした紡の服の裾を掴む。

「あ、ちょ…っ」

その時紡の体勢が崩れ私に向かって倒れ込んだ。

「…!」

あ、これ押し倒されてると思っていると

「ごめん!」

と言い私から離れようとするので私は紡を抱き寄せる。

「愛美…?」

折角良い雰囲気なんだからキスぐらいしたいなって私は思ってるけど紡はどうなんだろう?

そして私は紡に尋ねる。

「ねぇ…紡は私とキスしたくないの?」

「い、いきなり何言って…」

「いきなりじゃ無いよもう私達付き合い始めて半年だよそれに…好きな人からのキスが欲しいよ」

と目を逸らしながら小声で呟いた。

「…愛美が嫌じゃないなら…今から…しても良い?」

そして紡も顔を赤くしながら真っ直ぐにこちらを見据えて言った。

「うん…良いよ」

そう言った瞬間紡の顔が近づき私は目を閉じる。

唇に紡の唇の感触が伝わる。

暫し唇が触れ合い離れる。

紡はもう亡霊だから結婚式とかは挙げられないけれどこの幸せがずっと続きますようにと願いを込めながら私は紡にキスを仕返した。

END

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異世界喫茶─結─(むすび) 椎名わたり @Si_nawaTri1010315

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