03_土曜日の男
「えらく華音は機嫌がいいな」
「さあ、多分ジェイくんがアイス買ってきてくれるって聞いたからじゃない?」
「そうか」
いつもジェイは三人の好きそうなものを買ってくる。たいがいアイスなのだが、華音の誕生日にはぬいぐるみ。前回くれたウサギちゃんは擦り切れるほどに華音は大事に抱えている。華月にはプラモデル。今時じゃないが、ジェイはずっとやって見たかったと言って、結局華月とわいわい一緒に作っている。和愛には華音と色違いのぬいぐるみ。
今週の土曜日は華と哲平とジェイの3人で集まる。ジェイが『毎週土曜に行こうかな』と言ってくれたのでほっとする。哲平といて生まれる沈黙に自分が耐えられない。
「今度からジェイが来る回数を増やそうかなって言ってたよ」
「ホント!? 哲平さん、喜ぶね!」
「今度また井の頭公園にでも行ってみようかな……みんなで行くってのはどうだ? ちょうど学校が始まる前だし」
「そうするとお弁当が大変!」
「……部長に頼んでみるよ。参加しないで弁当作ってくれって」
「わ! 可哀そう! 誘ってあげればいいじゃない」
「だめ。そうするとジェイが部長ばっかり見てるようになるから」
真理恵が畳んでいた洗濯物を脇に置いて華に腕を絡ませてきた。
「華くん、ありがとう」
「なにが?」
「二人のこと、受け入れたんだね。まさなりさんも喜ぶよ」
「……よくマリエはすんなりと受け入れたよな」
「だって、好きって気持ち、私と華くんのと変わらないでしょ?」
「そうだけど。正直、まだ二人が目の前で並んで座ったら複雑な気分になると思う。やっぱり時間、かかるよ」
「そうだね。ゆっくりやって行けばいいよ。華くんは華くんのペースで」
「そうだな……お前はダメだぞ、井の頭公園」
「ええ、なんで?」
「生まれるのは4月だろ? 無理して欲しくない。だから弁当も作るな。やっぱり部長に頼むから」
「しょうがないなぁ、華くんって心配性なんだから」
「今度の土曜も動かなくていいぞ、ジェイが来るんだから。あいつ、何でもやってくれるからさ。毎週土曜来てくれるんならいろいろ助かるな」
「会社で使って、ここで使う気?」
「あいつはイヤがるようなヤツじゃないよ」
でも、一番ジェイが来るのを待ち侘びているのは…… 知らぬが仏とはこのことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます