第七話 終わりなき探求
黒崎はドラゴンの口から語られる言葉に、驚愕の表情を浮かべていた。それは、彼自身が身内を殺せる苦悩を知っていたからだ。しかし、彼には疑問が残った。なぜ自らの母を殺したのか、その苦悶が理解できるのに。
「ドラゴン、冗談じゃない...。なぜ、母を殺した?苦しみは分かってるはずだ!」黒崎はドラゴンに向かって問い詰めた。
ドラゴンは静かに拳銃を下げ、答えを返そうとしたその瞬間、アーサが手にした拳銃がドラゴンの足元を銃弾で貫いた。
黒崎は戸惑いを隠し切れなかった。しかし、ドラゴンは何かを知っているかのような微笑みを浮かべていた。苦痛を押し殺しながら、ドラゴンは言葉を紡いだ。
「くそったれめ...お前の身が手な報復のために、いくつの命が失われたと思っている?そして、今、日本はどれほどの被害を受け、世界はどのように揺れ動いていると思うのだ?」アーサは何も言わず、ただ黙って拳銃を手に、ドラゴンの頭部を撃ち抜いた。
黒崎はただそこに立ち尽くし、全てが虚空に帰す様子をただ見つめていた。自身の無力さに押し潰されそうな感情が心を襲った。かつての仇が、目の前で息絶えたのだ。なぜ母を殺したのか、彼は問いたかったが、その答えを得ることは叶わなかったのである。
アーサは黒崎に静かに近づき、手を黒崎の頭に置いたまま言葉を紡いだ。「邪魔者はもういない。ジェネシスを使ったんだろう?戦いの中で、その症状が現れていたはずだ」。黒崎は手を払いのけ、怒りを込めて言った。「なぜ殺した?冗談じゃないぞ...。聞きたいことがたくさんあった。そして、自分の手で終わらせたかったん……」アーサは黙り込んで黒崎を見つめた。
黒崎の怒りは沸々と湧き上がり、狂気が心を支配し始めた。彼は散弾銃を手に取り、アーサに向けると、しかしアーサによって銃口を抑えられ、膝蹴りを食らった。黒崎は無力感に押し潰されるまま、蹴り飛ばされ、殴られた。
黒崎は長い間意識を失っていた。目を開けると、夕陽が街全体を赤く染め上げていた。彼は地面に横たわりながら、息を乱しながら辺りを見渡した。
彼のまわりは壊れた建物の残骸と瓦礫が散乱し、血の匂いが漂っていた。疲労困憊の彼は立ち上がることもままならず、身体中に響く痛みに耐えながら、混乱と破壊の光景を見つめた。
夕陽が街を包むその美しさとは裏腹に、黒崎の心は深い悲嘆に包まれていた
黒崎は疲弊した身体を引きずりながら車に戻った。座席に身を沈めると、彼は探索したいという思いが心を駆け巡った。ファイルを手に取り、その中に何か手がかりがあるかもしれないと期待しながら開いた。
指先がくすぐるようにファイルのページをめくると、そこにはシミや折り目がついた最後の紙があった。黒崎は瞳を細めながらその文字を辿り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます