空色杯8

mirailive05

黄昏の地平(500文字以下)

 俺は胸のポケットから一枚の写真を取り出した。

 変色しかけたそれには、娘とその友達が映っていた。

 笑顔で走ってくる娘を写真にとりつつ、永遠のこの時を疑いもしなかった。その時までは。

 刹那、記憶が飛ぶ。

 再び意識を取り戻した時、世界は一変していた。

 焼けたコンクリートの匂い。見知らぬ地形。橋も河もそこにはなかった。

 変わり果てた世界で、ただ俺は夕焼けを見つめていた。

 少し、視線を上げる。

 幸せな娘たちの映るその向こうの空に、この戦いの始まりを告げる軌跡が映っていたのは、どこの悪魔の仕業なのか。

 彼女たちはもういない。あるのはわずかな思い出だけだ。

 あれからどのくらいの時間が過ぎたのだろう……

 瓦礫に預けている背中に、何故か力が入らない。

 もう夏も近いというのにやけに寒いな。

 ゴトリと、自分のアサルトライフルの倒れる音がした。

 そうか、おれの番ということだな。

 願わくは、彼女たちのもとにたどり着けるように……

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