ジュークボックス

やまねこ

第零話

「助けて欲しいんだ」

 僕は、だからなんの躊躇いもなく彼女に話しかけた。問いかけたとも言える。救いを求めた、とは少し違う。

「助けてくれないか」

 二度言った。なんの恥じらいもなく。それほど切羽詰まっているとでもいうのか?いや、そんなことはない。決して急いでいない。待ち続ける腹づもりではあるのだが、それはともかく、二度目だ。

「助けてください」

 三度!三度目だと!なんということだ。仏にだって三度も懇願するものか。どうした、どうしてしまったのだ。おい誰か、この救えない愚か者をどうにかしてくれ!こいつは三度も、三度って。嘘だろ。




「私に何をして欲しいわけ?」

 待望の返事、いや当然の疑問だった。そうだ、返さなきゃ。何かを言わなければいけない。僕は助けてもらった。彼女は返事をした。してくれた。受け入れてくれた。彼女はじっと僕を見つめている。だから僕は返事を。返事、返事?あれ、返事?なんの?助け?あれ?なんで?

 身体が震える。 足がおぼつかない。震えて立ち続けることができない。震える。ゾクゾクする。寒い、いや熱い。ガクガク、ブルブル。おかしい。どこかおかしい。心臓だ。鼓動がうるさい。何故こんなに激しい。おかしい。なんで。助けて。どうして。なんで。なんで。


僕は倒れた。彼女になだれかかったのだろうか。覚えていない。意識にない。おかしかった。どうかしてた。だから僕は知らない。何も知らない。


「よかったね。私がいて」

「もしも目の前に私がいなかったら、落ちていただろうね」

「落下して、落下死、て」


つづき、つづく

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ジュークボックス やまねこ @yamaneko-08

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