メデューサ様と性奴隷

石狩なべ

メデューサ様と性奴隷

 いつかの時代のとある国のとあるところに、偉大なるメデューサという女王がおりました。彼女は不思議な力を持って生まれた特別な存在でした。というのも、メデューサの家系に生まれ落ちた女の髪は蛇となり、その目は人間を石に変えるほどの力を持っていたのです。


 国に住む民達はそんな女王を恐れ、敬い、決して城に近づく者などおりませんでした。生贄にでも捧げられてごらんなさい。もう二度と家には帰れないことでしょう。


 そんなメデューサは今夜も頭に住み着く蛇を揺らし、強く命令しました。


「来い」

「……はい」


 命令された奴隷は、言われるがままに女王のベッドへ近づきます。すると、メデューサに手を引っ張られ、ベッドに倒されてしまいました。奴隷は目を見開き、メデューサを見つめました。メデューサはそんな奴隷に手を伸ばし――それはそれは優しく、頭を撫でてあげました。


「さあ、子供は寝る時間じゃ。はよ寝なさい」

(ああ、メデューサ様! 今夜こそあたし、身を捧げます!)

「なぜパジャマを脱ぐ。気にいらんかったか。あいも変わらず貴様は奴隷のくせに生意気じゃ」


 メデューサの蛇達が奴隷をなだめるようにいっぱいキスをしてくれて、さらにメデューサのお手々が優しく撫でてくれるので、奴隷はどんどんとろけていきました。


「あぅ……メデューサしゃま……」

「はよお眠りなさい」

「あぅう……」


 しばし耐えましたが、今夜も奴隷女はこの女王に勝つことが出来ませんでした。


(この城に生贄に捧げられて早くも一年。最初は村の者達に捨てられる形だったので、とても心細かったけれど、そんなあたしにメデューサ様はとても優しくしてくれた)


 生贄箱を開けた魔物達は目を丸くし、メデューサも呆れた目を向けてこう言った。――子供ではないか。しかも生きている。村の奴らめ、曖昧な生贄を捧げよってからに。


「メデューサ様、肉の部分だけ切り抜いてお召し上がりになりますか?」

「貴様、わらわがダンボールに入った子犬を取って食うほど落ちぶれていると思っているのかえ? そら、ご覧なさい。どこに肉がある。骨が見えそうじゃ。奴隷として曖昧に働かせておけ」


 メデューサ様の子分として働いてる魔物達は奴隷が来たというのだから、自分達の仕事をこの奴隷に押し付けてやりました。しかし、奴隷は魔物達より身長が高かったので、魔物達が三人がかりで取らなければいけないものも、軽々と手に取ることができました。さらに、奴隷は魔物達より足も長かったので、魔物達が走って渡る廊下を軽々と歩いて渡ることが出来たものですから、魔物達は大変楽ができて、この奴隷が出ていかないように、仕事をするたびにお菓子をくれるようになったのです。


 しかし一つだけ。この奴隷は夜にめそめそ泣くことがあったのです。魔物の一人がメデューサにそれを報告し、言いました。この城は、今やあの奴隷がいないと清潔さを保てません。我らが楽をするためにも、どうかあの奴隷を帰さないようにしてください。その魔物をボコったメデューサでしたが、奴隷が泣いていた理由が気になったので、直接訊くことにしました。


「なぜ夜泣きをする」

「あたし、夜が怖いのです。辺り一面暗くて、魔物達はみんな寝てしまうからとっても静か。するとどうでしょう。村にいた時のことを思い出してしまうのです。あたしは皆から忌み子と呼ばれ、虐められておりましたから、怖くて、悲しくなります。すると、涙が自然と溢れてきてしまうのです」

「夜な夜な泣くと目が溶けてしまいかねない。悲しいのなら、今夜からわらわと寝れば良い。丁度温かい抱きまくらが欲しかったところだ」


 その日から奴隷は女王と一緒に眠ることとなったのです。手下の魔物達は、女王と一緒に寝るなんて考えるだけでもぞっとしたのですが、奴隷はメデューサがとても優しい人だと感じていたので、平気でした。むしろ、メデューサと一緒に寝ると、よく眠ることができたので、奴隷は朝にすっきりして目覚めることができました。


 こんな生活をしているものですから、奴隷が魔物やメデューサを大好きになることは、誰でも予想ができることでしょう。奴隷はこの者達に恩を感じていたので、どうにかして恩返ししたいと考えておりました。


「ねえ、教えて? メデューサ様はどうしたらお喜びになるの?」

「良い考えがある。メデューサ様は夜の行いが大好きなのさ。以前ならば、とろけるような色男を毎晩のように城に連れ込み、交尾をしていたものだけれど、お前さんが来てからは、子供の教育に悪いからと、全く夜の行為をすることがなくなった。だから、お前さんがその相手となれば、メデューサ様も大喜びさ」

「なるほど。ならばあたしは、あの方のために性奴隷となりましょう!」


 奴隷は自らメデューサに名乗り出ました。


「メデューサ様、奴隷のあたしに性奴隷としてのお役目もお与えいただきたいのです。きっとお役に立ちますわ」

「ああ、いいよ」

「やったー!」


 当時15であった奴隷は、一生懸命夜の行いの勉強を致しました。様々な色っぽいパジャマを身に着け、メデューサが楽しくなるために、それはそれは色んなことに挑戦しましたが、女王は奴隷をよしよしと撫でて、首を傾げ、


「ちゅ」

「んっ」


 キスをして、やっぱり奴隷を優しく撫でるだけで終わりました。だから手下達は驚きました。だって、足腰立って、元気に働いているんだもの! 奴隷はため息を吐きました。


「メデューサ様、ちっともあたしに手を出してくださらないの」

「色気が足りないのだよ」

「もっと喘ぎの練習をした方がいい」

「奴隷殿、発声練習じゃ! あんあんあん!」

「あんあんあん!」


 毎朝魔物達と発声練習をしますが、それでもメデューサは奴隷にキス以上のことはしませんでした。けれども、毎晩一緒に寝るわけですから、必ずキスをして、頭や体を撫でますが、本当にそれだけなのです。それが半年間。奴隷は今や16となりました。


「一体どうしたことでしょう。女同士なのだから子供が生まれることはない。心配することは何もないというのに、メデューサ様ったら、あたしをトロトロにとろかすだけで、何もしやしない。もっと、あたしが壊れるほど叩きのめしてくださっていいのに。あろうことか優しく撫でて終わる始末。与えられた仕事もろくに出来ないなんて、あたしったら、なんて役立たずなのかしら」


 このままでは役立たずの奴隷になってしまうと思った奴隷は、もっと性についての勉強を致しました。そこで、騎乗位を発見したのです。


「これだわ!」


 その晩、奴隷はメデューサの上に跨り、メデューサを楽しませようとしましたが、メデューサは冷たい目で奴隷を見つめ、すぐにその手を取ってベッドに押し倒してしまいましたとさ。


「メデューサ様! 騎乗位です!」

「子供は寝る時間じゃ。はよ寝なさい」

「あたしは、メデューサ様の性奴隷です! 夜の行いをするのです!」


 暴れる奴隷をメデューサが抱きしめ、いつものように優しく撫で始めました。


「あたし、貴女様に滅茶苦茶にされて、ぶっ壊れるのです!」

「エロ本の読み過ぎじゃ。明日手下共に回収させよう」

「どうぞ!」


 撫でられながら奴隷が決意の声を上げました。


「あたしを、お好きになさってください!」


 三分後、メデューサの髪の蛇達にキスをされ、メデューサの手に撫でられる中、すやすや眠る奴隷がおりましたとさ。メデューサはその寝顔を見つめたまま、蛇達を手で退かし、優しいキスを贈るのでした。もちろん、翌朝も奴隷はすっかり良い目覚めを迎えましたが、心にはどんより黒い靄が広がっておりました。


「ああ、あたしったらとんだ役立たずだわ。恩人のメデューサ様の夜のお供にもなれないなんて」

「畜生。メデューサめ、ちょっと浮気したからって俺を追い出すなんて。あ、ちょいとそこの地味な女の子」

「あら、珍しい。お客様だわ。こんにちは。ご機嫌いかが?」

「おや、よく見たらなかなか悪くない顔だ。体の形もなんだかそそられる。君、こんなところで何をしているんだい? ここはメデューサ女王の恐ろしい城だぞ」

「恐ろしいだなんて、あの方はとてもご親切で、忌み子と嫌われたあたしのことを奴隷として、それはそれは大切にしてくださっている方です」

「奴隷? 奴隷だって? そんな高そうな服を着ておいて、奴隷だっていうのかい?」

「ええ。あたしはメデューサ様に生贄に捧げられた奴隷でございます。全てメデューサ様のご命令に従う存在です」


 さて、この男が一体何者なのか、皆様が気になっていることは百も承知。彼の名前はポセイドン。ちょこっと浮気をしてメデューサに城から追い出された、いわゆる、元彼というものである。ここへ来たのは、彼の資金が底をついたので、しばらくの間、メデューサに世話になろうと思った次第でした。

 彼は大層な女好きで、特に若い女が大好物だったので、まだ16になったばかりの奴隷を見て、下半身に集中する神経をときめかせたのです。

 さらに、この若い女は奴隷というわけなので、メデューサの手下の魔物達よりも低い身分ということです。であるならば、なぜ手を出さない選択を出来ましょうか?


 ポセイドンはすっかり良い気分になり、この女の裸を見たいという考えに至りました。しかし、外でそのような行為をすることはあまり好きではなかったので、メデューサにバレないように城の中に入ろうと思ったわけです。


「奴隷殿、俺は何を隠そう、メデューサの客人さ。彼女とは親しい関係でね、用があって、はるばる遠くからやってきたのさ」

「まあ、そうでしたの! でしたら、すぐにメデューサ様をお呼びしましょう!」

「い、いや! レディを呼び出すのは気が引ける。君が案内してくれたら、俺は自分の足で彼女に会いに行こう」

「なんてこと! この人、メデューサ様をレディと呼んだわ! きっと、見る目のある素晴らしい人に違いない! 喜んでご案内致しましょう!」


 純粋な奴隷はすっかりポセイドンの言葉を信じて城の中へ入れてしまいました。さらに、彼に温かいお茶と、お手性のクッキーまで出してやったのです。可愛らしいクッキーを見て、ポセイドンを大喜びしました。だって、クッキーからは甘い、処女の匂いを感じたのです。処女好きのポセイドンには、たまらない誘惑でした。その一部始終を見た魔物達は、驚きおののきどっぴんしゃん! 大変だ! なんて言ったって、あの浮気者の男が再び城に入ったなんて知られたら、メデューサに何をされるかわかったものじゃない。魔物達は一目散にメデューサの元へ駆け出し、見たことを報告しました。


「メデューサ様! あのポセイドンが城に入り、なんと、奴隷に色目を使っております!」

「何も知らない奴隷ですから、それを紳士の行いだと信じて疑わない様子!」

「「以上。報告でした。ボコらないでね?」」


 メデューサの部屋には、ボコられた魔物達が残されましたとさ。さて、一方ポセイドンと会話を弾ませていた奴隷は、メデューサを呼びに行かなければいけないことに気が付き、会話を終わらせることにしました。


「お客様、そろそろメデューサ様をお呼びして参ります。こちらでお待ち下さいな」

「いいや、奴隷殿。俺は大層、君を気に入った。奴隷だというのだから、客人を喜ばせてから主を呼んだ方がいいのではないか?」

「とても楽しい会話をさせていただいたことに関しましたはお礼申し上げますわ。けれど、いつまでもこうしてはおられません。何も知らないメデューサ様は、いつまで経っても来ることはありませんもの」

「そうさ。誰も来ないのだから、君が俺に犯されたって、誰も知らずに終わるのさ!」


 そう言い放ったポセイドンは、まるで凶暴な野獣のように奴隷に襲いかかったのです。か弱い奴隷は大きな悲鳴を上げ、逃げようと走りましたが、男の力には到底敵いませんでした。あっという間に捕まってしまいましたとさ。


「嫌です! おやめください! どうか!」

「げへへへ! いい声を出すじゃねぇか! 奴隷なんだから、大人しく俺を受け入れやがれ!」

「いやーーー! メデューサ様ぁーーー!!」


 迷うことなく名前を呼んだ奴隷は、あまりの恐怖に目を閉じました。怯える姿に魅了されたポセイドンはそのまま奴隷の服を乱暴に破いた瞬間――いつの間にか目の前に立っていたメデューサの存在に気が付きました。顔を上げると、メデューサはこちらを、見たことがないほどの殺意を持って見ているではありませんか。ポセイドンは顔を青ざめ、すぐに奴隷から離れました。


「メデューサ! 久しぶりじゃないか! 元気だったかい!?」


 胸元まで服が破られた奴隷を見たメデューサが、髪の蛇と共にポセイドンを睨みつけます。


「あ、ああ、それは、アレさ! その奴隷から誘ってきたんだ! 俺は一度断ったんだがね、どうしても子種がほしいというものだか」


 突然、口が動かなくなったポセイドンは、全ての言葉を言い終えることが出来ませんでした。それもそのはず。だって、あまりの恐怖に、ポセイドンは石となってしまったのだから、口が動くはずもない。メデューサは魔物達に命令しました。


「このクソ男を崖から突き落としておしまい。サボる者がいれば、石に変えてしまうぞ!」


 魔物達は一人残らずポセイドンの石を運ぶ作業に取り掛かりました。城にはメデューサとすすり泣く奴隷だけが残されたので、メデューサは自分のマントを奴隷にかけ、優しい手で頭を撫でると、そこでようやく奴隷が瞼を上げました。揺れる視界には、性欲にまみれた男ではなく、優しき主がいたのです。


「ああ……! メデューサ様!」


 奴隷は迷うことなくメデューサの胸に飛び込みました。そんなことをする人間は、後にも先にも、この奴隷しかいなかったので、殺意を放っていたメデューサの手は優しい力加減で奴隷を抱きしめ、殺意を放っていた髪の蛇達は優しい口で奴隷にキスを始めました。


「メデューサ様、約立たずの奴隷でごめんなさい! あたし、少しでもメデューサ様に恩返しがしたくて……!」

「わらわは鼠に無理難題を命令するほど落ちぶれておらん。奴隷よ、お前の出来る範囲で出来ることをやれば良い。お前が何をしでかしたって、ここがお前の家なのだから」

「ああ、メデューサ様……。なんて慈悲深いお方。あたし、貴女様のためなら何だってできます。本当です。心も身も捧げます!」

「子供に興味はない」

「ガーン!」

「今の時間は今だけのものだ。ゆっくり成長し、大人となれば良い。……それまでは」


 メデューサが奴隷に近付き、囁きました。


「我慢するわらわに感謝なさい」


 触れるだけの優しい口付けに、奴隷はまたとろけてしまいます。だって、こんなにも甘くて、こんなにも優しくて、さっきまでとても怖かったのに、主が全てを拭い、甘砂糖のような愛だけを残してしまったのだから、奴隷はそのとんでもない甘さに身を委ねることしか出来なかったのです。


「メデューサ様、あの……今夜も、ご一緒に寝ても、よろしいでしょうか……?」

「何を今更。わらわと寝るのは貴様の仕事の一つだぞ? サボリ者は許さん」

(ああ、メデューサ様……。どうしてそんなにもお優しいのでしょう。忌み子として嫌われたあたしを、こんなにも大切にしてくださるなんて……)

「奴隷よ、どこを見ている」

「あっ」

「貴様が見て良いのは、わらわだけじゃ」

「はい……。メデューサ様……仰せのままに……」


 激しい鼓動を感じながら、奴隷はこの身をメデューサに委ねるのでありました。


 さて、一悶着終えた翌日には、城は日常を取り戻しておりました。奴隷は笑顔で今日も城のお掃除をしています。


 その頃一方、執務室では、とても大事な魔物会議が行われていたのです。プレゼンを終えた魔物に、メデューサはこのように言い放ちました。


「二年後にやる奴隷との結婚披露宴がこの程度で良いと申すのか。面白い。貴様ら、わらわに殺されたいようじゃのう」

「か、考え直して参ります! すぐに!」

「ウェディングドレスも考え直してきます! すぐに!」

「18歳になった時点で、あの奴隷はわらわの妃となる。それを踏まえた上でもう一度考え直してこい! この約立たずども!!」

「ひぃ!」

「オイラ達にも優しくしてよ!」

「女王様は奴隷にばっかり甘いんだから!」


 困り果てる魔物達がいなくなった頃、ドアが叩かれました。メデューサと髪の蛇達が殺意のある目でドアを睨むと、ドアから声がかけられたのです。


「メデューサ様、お茶をお持ちしました!」


 その声を聞いた瞬間、殺意は消え失せ、蛇達も大人しくなり、メデューサが素知らぬ声で返事をしました。


「入りなさい」

「失礼します。メデューサ様!」


 ドアの先には、お菓子とお茶の用意をした笑顔の奴隷がおりました。


「上手に焼けたので、食べて頂きたく、お持ちしました……」


 メデューサは、照れて頬を赤らめる奴隷を見るたびに、強く胸を締め付けられました。今までこんな気持ちになったことはなく、しかし、それは決して不快なものではなかったので、メデューサは本心に身を委ねることにしたのです。ですので、彼女は今日も奴隷に笑顔を浮かべ、奴隷は満面の笑みを浮かべます。


「ど、どうぞ、食べてください!」

「一人で茶をするのはつまらん。隣に座り、わらわに付き合いなさい」

「ああ、メデューサ様、今日もなんて美しい方なのでしょう。はい。メデューサ様、全ては貴女様の仰せのままに」


 奴隷は嬉しそうにメデューサの命令に従い、隣に腰掛けますと、メデューサの蛇達に沢山キスをされてしまいました。


 今日のお菓子は奴隷お手性のマドレーヌ。甘いお菓子を味わう甘い時間を、甘い二人で過ごすのです。



 メデューサ様と性奴隷 END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

メデューサ様と性奴隷 石狩なべ @yukidarumatukurou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ