再び見えた光【前編・下】
「その通りよ。もっとも食の好みに限らず、わたくしは昔からなにかとこの国の中では異端の存在でしたから、もしかしたら『ヒトの輪の中に入れてもらえた』と感じた経験があまりないのかもしれません。この身分でなければ、迫害されていても不思議ではなかったでしょうね……」
姫様は昔を振り返り、遠い目をします。
「人々の持つ排他性に鑑みれば、その可能性も否定は出来ません。貴女様は何年ものあいだ、孤独と戦っていらしたのですね」
それは行き過ぎた妄想だと諭すようにBKFP002は言いました。
「いえ。孤独だったのは事実だけれど、戦うなんて格好良いものではなかったと思います。正面切って立ち向かっていく事は出来ていませんでしたから」
「そうでしたか」
「でも、
姫様は大きくひとつ深呼吸して、話を締めにかかりました。
「つまり、全部ただの私情というわけです。いえ、あるいは私怨と言うべきかもしれません。あれだけ偉そうな事を言ったくせにね。詳しく話しすぎてしまいました。ごめんなさいね。退屈だったでしょう? あなたの疑問は解決しましたか?」
「はい。お仕えする貴女様がどういったお考えをお持ちの方なのか詳しく知る事が出来て良かったです。初対面の私に色々とお話ししてくださって、ありがとうございました」
BKFP002は深々と頭を下げました。
「ここに来る前までは『彼がもういない』という事さえわかればいいと思っていましたが、
「身に余るお言葉です。こちらこそよろしくお願い申し上げます。……ところで姫様、ご用件というのは以上でお済みでしょうか? 通達とお願いについては、まだお伺いしていなかったと記憶していますが」
BKFP002に指摘され、姫様は当初の目的を思い出しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます