つくって!my sweet

片喰 一歌

プロローグ


 とある大陸の片隅に、ちいさな王国がありました。


 その国の名はアッシュゴート国。数十年ほど前に最先端の技術によってめきめきと頭角をあらわしました。国土こそせまいものの豊かなアッシュゴートは、現在では列強に名を連ねる一国にまで成長を遂げました。


 アッシュゴートをそこまで発展させた一番の要因……。それは『手を汚さず、一分間もあれば一日分の栄養素の摂れる食事』の開発でした。


 仕事に追われ、娯楽の飽和した時代。食事に費やしている時間などない人々にとって、その栄養食の出現は待ちに待ったものでした。


 その栄養食は、『短時間で簡単にbrevity食べられ、以前の主食であったパンbreadの代わりになる』事から『breavity(ブレヴィティ)』と命名されました。


「こういう食べ物がずっと欲しかったの!」


「助かった……。もう苦手なお料理を頑張らなくていいんだ!!」


「もう前の食事には戻れないな。ブレヴィティのない生活なんてゾッとする」


「洗い物をしなくていいのも嬉しいなぁ」


 開発者の出身地であるアッシュゴートのほとんどの国民がすべての食事をブレヴィティで済ますようになるまでは、数ヶ月とかかりませんでした。


 ブレヴィティの噂は西から東へ、北から南へと瞬く間に伝わり、全国から販売依頼が殺到しました。


 このように注目され、渇望され、近隣国から世界中に普及しつつあるブレヴィティですが、人々は味の好みまで放棄したわけではありません。

 

 フレーバーも初期の段階で何十種類とありましたが、元々あったものに加え、各国の好みに合わせて調整された物が順次増産される一方で、ブレヴィティの生産は常にぎりぎり。


 優先的にブレヴィティが供給されるのはアッシュゴート国民といち早くアッシュゴートと取引をした数か国くらいのもので、全世界に行き渡らせるためにはブレヴィティ工場の建設が急務となっていました。

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