「推しの子」から見えてくる「アイドルの嘘」
雑食ハラミ
「アイドルの嘘」という神話
まず始めに。
私はドルオタでもなければ、テレビを見る習慣もない。
ただ、偶然目に入ったワイドショーや、ネットニュースで見聞きして得た情報から連想した思いつきをつらつら綴るだけなので、彼女らのファンから「お前は何も分かっていない。本当はこれこれこうなんだ」というお叱りが出たらごめんなさいと言う他はない。最初に謝っておきます。
ここは、「推しの子」を読んで「アイドルの嘘」について私がつらつら考えたことを吐き出す場所です。言わば思念の排泄場。そんなわけで、気の赴くままに書きなぐるので乱文ご容赦願います。ぶりぶり。
「アイドルの嘘」と聞いて、実在のアイドルから連想したエピソードを3つ紹介したいと思います。お品書きは①酒井法子の涙、②後藤真希の喪服姿、そして③辻希美ブログの3つでお送りいたします。ついでに④雑記というかおまけ、で更に語っちゃいます。
①酒井法子の涙
もう10年くらい前になるかしら。酒井法子ことのりピーが覚せい剤で逮捕されたじゃないですか。ただ捕まったんじゃなくて逃亡の末の逮捕だったから(しかも髪を短く切って再登場したから)スキャンダルの火力が余計強くなった印象。そこで多額の保釈金を払って保釈された時、マスコミの前に姿を現わした際に完ぺきな演技をしたんですよ。朗々とした口跡で謝罪を述べて、余りに美しいひと筋の涙を流したんです。まるでドラマの一場面のような絵になるひと筋の涙。ただ、余りに美しすぎて誰もが嘘だと見抜いてしまった。結局そのお陰で世間の反応は芳しくなかったと記憶しているのですが、あんな人生の修羅場でも見栄えを気にして美しく演じることに心血を注いでしまう業の深さとか、嘘だと分かっているのにあの涙を美しいと私は思ってしまったことなど、とても心に強く刻み込まれた出来事でした。
②後藤真希の喪服姿
似たような話で、後藤真希ことゴマキの喪服姿も強く印象に残っています。確か母親が自殺したんでしたっけ。本人が何かしでかしたわけではないのに、スキャンダラスな内容なので随分注目されていました。そこで、カメラの前に位牌を持って現れたゴマキの和服姿が不謹慎ながらもすごく美しくて、本当に本当に不謹慎なんですがセクシーですらあって私は目を見張ってしまいました。普通親が急死したら動揺しすぎて身なりに気を使う余裕がなくてもおかしくないのですが、彼女は不自然なくらいに完璧で、いい悪いは別にして、やはり周りから見られる立場というのを意識しすぎるくらい意識した上でのあの喪服姿だったんだろうなと思いました。
少し話は逸れるけど、もいっちょゴマキで連想したこと。これはつい数年前だけど、若い子と一緒にモー娘。の曲をテレビで歌ってたんだけど、圧倒的センターオーラで彼女にしか目が行かなかった。既に30越えしてるのに、スキャンダル塗れなのも知っているのに、アイドルとしての輝きが昔から微塵も失われてないことがすごくて、感動すらしてしまった。別に彼女のファンでもアイドル好きでもないのに、「一番星の輝き」が分かってしまう。本物のアイドルってああいうのを言うんだろうな。
③辻希美ブログ
辻希美こと辻ちゃんと言えば、最近はすっかり下火になったけど少し前はブログの内容が主婦層からバッシングされてそりゃまーひどいものでした。もちろん自分はあのバッシングに参加しなかったけど、叩かれる理由はなんとなく察せられるものがあったとぶっちゃけ思う。あれを叩いていた人は、あのブログ内容におままごと感、ニセモノ感を見出していたのだと思う。正直自分もそれは感じていた。でも、というかだからこそ、彼女を叩く気にはなれなかった。だって、たまたまちゃんとした家庭に生まれて恵まれた環境で育った人間が、それを知りえなかった人間が見様見真似でやったことに対して「こんなのただのコスプレだよ」「所詮猿真似だよ」と笑うのってグロテスクじゃありません?これだって「アイドルの嘘」の一つだと思う。彼女は、少なくとも今に至るまで完璧に嘘をつきとおしているからバッシングの波も止んできて、今では「モー娘。で一番成功したメンバー」になれた。このまま子供たちが健やかに育って完璧な嘘をつきとおして欲しい。そうすれば嘘が本当になるから。
さて、これは余談だけど、彼女は前述したゴマキ母の葬儀でも強烈な印象を残しています。なんと葬式に黒い大きなリボンを頭に着けて来たのです!あれはべっくらこいた。黒けりゃなんでもいいのかよ!と思わず突っ込んでしまった。身の回りに常識的なことを教える大人がいなかったんだろうなという証左にもなってしまって、非常識だと怒る以前に切なくなったのを覚えている。
④雑記、というかおまけ(のくせに一番長い)
以上、「アイドルの嘘」とうキーワードだけで長く語ってしまったが、じゃあどうしてアイドルが嘘をつくのかというと、彼ら彼女らが「愛されたかった子供」だったからだと思う。親から愛を得られなかった子供が愛されたいためにアピール力を磨く。運よく顔がよかったり歌がうまかったりするとワンチャン人生逆転できる。それが「アイドルの嘘」。でも運よくスターダムにのし上がれても精神的な屋台骨はぐらぐらしたままだから、心の中はがらんどうで冷たい風が絶えず吹きすさんでいる。だから彼らは不安定でしばしば嘘をつくし、時には反社会的な行動すらとる。
芸能界の闇を描いた作品は数多いけれど、アイドルになる子に「愛されたかった子供」が多いという現実を真正面から取り上げたという意味で「推しの子」という作品は特異的だと思う。ポップな絵柄とテンポの良いストーリ、絶え間なく挿入されるギャグに修飾されているけど、実はものすごいタブーに切り込んでいるし、根底に流れるテーマはどこまでも暗く重苦しい。かつ、「愛されたかった子供」の危うさを正面から描いているところも誠実だと思う。
この「誠実さ」についてちょっと解説を加えると、フィクションにおいては、キャラにダークな魅力を付加するためにトラウマ持ちにしていることが多いけど(私も創作するので耳が痛い……)実際のトラウマ持ちって、精神的に不安定だし、平気でうそをついたり無気力だったりすることもしばしばなんですよね。その辺の不安定さを「推しの子」ではうまく表現しているなあ、逃げてないなあと思いました。
原作ではそろそろクライマックスに差し掛かる雰囲気だけど、どうなるんでしょうね。どこまでもリアルに考えると楽観的な結末にはならなそうだけど、せめてフィクションにおいては救いのある結末にしてほしいなあと個人的には思います。というか、せめてフィクションだけでも何らかの救いが欲しいよね、私たちがクソゲーな現実に立ち向かえる勇気を持つためにも。
「推しの子」から見えてくる「アイドルの嘘」 雑食ハラミ @harami_z
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