第36話 ダービージョッキーへ
日本ダービー当日。満員の東京競馬場にサラブレッドの頂点を決める戦いが始まる。一番人気は嵯峨弘之のダンスパフォーマー。二番人気が俺ののアイノクラウディア。三番人気は岡田弘明のライジング、四番人気は滝川英雄のホウオウショウマ。青葉杯からヨシノリのタービュライ。京都記念勝ち馬の岸信親のキングジョージア。NHKマイルを勝ったオーパスはマイケル・ベルモント。そうそうたるメンバーが日本最高のサラブレッドの座を争う。
「いよいよだな。アキト。お前にはオークス、ダービー同年制覇がかかってるが、気負うなよ。作戦は先行だが、出遅れた時は無理しないで後ろからでいい」
小河原先生はそう指示を出した。
「はい、先生」
ホウオウショウマは本来、逃げ馬ではないので終始この馬と走ることになるだろう。距離に不安の残るオーパスは後ろから、他にも差し馬は岡田のライジング。ここに来ても一番怖いのは脚質自在と思われるダンスパフォーマーだ。ダンスの二冠だけは阻止したい。アイノクラウディアはステイヤーではないので、菊花賞が勝てるかは相手関係によるが、今までのところ長距離馬といえるのはホウオウショウマだ。皐月賞の逃げはスタミナに自信があったからで、この馬も怖い。逃げそうなのはキングオブキングスの半弟、キングジョージアあたりか。
輪乗りを終え、各馬ゲートに向かう。アイノクラウディアは外枠発走で若干の不利は否めない。ファンファーレが鳴り、ゲートが開く。ポンと出たのはタービュライとキングジョージア。キングジョージアはそのままハナを主張し、タービュライは二番手に控える。次いで三番手はダンスパフォーマーが絶好の位置取り。アイノクラウディアには嫌な競馬となった。アイノクラウディアは先団後方の五番手。それを見るようにライジング。最後方からオーパス。ここまでのペースはやや早い。展開的にはライジングのペースだ。三コーナー回ってオーパスが上がってくる。仕掛けどころを間違えれば勝ちはない。ライジングが鞭を打たれたのを聞いて、俺もアイノクラウディアに鞭を入れた。
後方から上がるライジングとオーパス。前はキングジョージアをかわしてホウオウショウマ。ダンスパフォーマーはまだ動かない。横に並びかけるとダンスの嵯峨は鞭を入れた。そのまま後ろから上がってくるダンスパフォーマー、アイノクラウディア、ライジングにホウオウショウマは飲まれた。
直線先頭はダンスパフォーマー。アイノクラウディアが追いすがる。ライジングの脚が止まる。ダンスパフォーマーとハナを争うアイノクラウディアがわずかに前に出たところでレースを終えた。
俺は大きくガッツポーズをして、ウイニングランに。涙で観衆は見えない。何度も観客に頭を下げる俺を小河原調教師が出迎える。
「よくやった! 本当によくやった!」
「ありがとうございます! 先生! やっと斎藤先生の墓前に堂々と立てる」
俺は下馬して小河原先生と勝利の喜びを分かち合った。
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