第34話 シークレットエデン オークス
オークス当日朝。飯塚昭三調教助手は、アキト特性のニンジンはちみつをシークレットエデンに食べさせた。
「エデン、アキトのためにオークス勝ってこい。頼むわ」
当日パドック、ひときわ目を引く四白流星の栗毛馬、シークレットエデン。歩きもしっかりしており、気合乗りもいい。相手になるロンリィバタフライは神野からマイケル・ベルモントへの乗り替わり。こちらの毛艶もいい。フラワーカップの勝ち馬、アッパレカッパゲは鞍上ヨシノリ。少しうるさい所を見せている。フローラSの勝ち馬カイドウクイーンは鞍上に嵯峨を迎え、油断ならない相手だ。
「アキト、今回は油断ならんぞ? 全馬お前をマークしに来てる」
パドックでアキトを迎えた飯塚調教助手は言う。
「そうだね。でもしぃちゃんの方が強い」
「そうさな。勝ってこい」
「はい」
言いながらもアキトの緊張は限界だった。地下馬道を抜けて返し馬を軽く流す。軽快な足取りで走るシークレットエデンにアキトは訊いた。
「お前は緊張してないのか? しぃちゃん」
シークレットエデンは鼻を鳴らす。
「そりゃそうか。一番強い馬に俺は乗ってる」
輪乗りを終え、ゲートへ。
七番ゲートにおさまり後続を待つ。アッパレカッパゲがなかなかゲートに入らなかったが、ゲート入りし、スタートへ。
アッパレカッパゲはまずまずのスタートから逃げを打つ。カイドウクイーンは3番手、ロンリィバタフライは後ろ目を走るシークレットエデンの外に付けた。正直一番いやな競馬になったとアキトは感じた。神野五郎がこの馬だと選んだロンリィバタフライに乗るのは世界最高峰のジョッキー、マイケル・ベルモント。その馬との叩き合いは必至。ロングストレッチを抜けて第三コーナーへ。ここで早くもベルモントとロンリィバタフライは仕掛けた。じっくりと順位を上げながらロンリィバタフライを追うアキト。直線向いてアッパレカッパゲを抜いてカイドウクイーンが先頭に。その後ろからロンリィバタフライ。更にはシークレットエデン。アキトは鞭を入れてロンリィバタフライに並ぶ。垂れてきた先行馬を次々と交わし、150メートルのマッチレースに。アキトは馬場の良い所を選んでロンリィバタフライを外から躱すが食い下がるロンリィバタフライ。しかし2400メートルの壁か、脚色は鈍い。果たしてオークスの栄冠は、アキトとシークレットエデンの頭上に輝いた。
「やった! やったなぁ! しぃちゃん!」
アキトの目からはもう熱い涙が零れ落ちている。アキトはなんどもシークレットエデンの首を撫で、頭を撫でた。
ヒーローインタビューではただひたすらに松沢調教師と馬主である最上ひかりへの感謝、調教助手飯塚さんへの感謝を涙を流しながら訴え、アキトは自身初めてのオークス騎乗で栄冠を勝ち取った。
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