第2話 ターミネーター小河原
小河原は首都高を神奈川県の明人の住む相模原市まで飛ばす。
助手席には木刀。
小河原の頭はスキンヘッド。それにサングラス。どこからみてもヤクザそのものだった。
明人は、補導されたものの、いつも面倒を見ている沼田巡査の執り成しで、少年院には送られなかったが、数十万の学校の窓ガラスの修理代の請求の支払いを、明人の叔母で親権者である佐夜子は請求され、親戚に金策を頼んでいた。
当の明人はと言えば、平然と授業に出ているのである。
明人は今回の件でちょっと周囲からは距離を置かれていた。
もう中学卒業を控えているのに、明人はまったく進路を決めていなかった。
いや、進路は決まっていたのだ。
明人は卒業したら、牧童として北海道早来の松平ファームに勤めに出るつもりだったのだ。
明人の学校に小河原は到着すると、彼は学校の受付に木刀を下げて行き、「吉沢明人に会いに来た」と用件を告げた。
どう見てもヤクザのカチコミである。
受付嬢は、震える声で「3-1ですぅ……」と言った。
授業中の校舎内を小河原はターミネーター張りに木刀を担いで構内を闊歩する。
やがて3-1に着くと、小河原は教室のドアを開け、こう言った。
「美浦のほうから来た! 俺は斎藤厩舎の小河原正二、吉沢アキトぉ! ちょっと顔貸せ」
明人はゆっくりと、薄ら笑いを浮かべて言った。
「美浦のほうだぁ? 斎藤厩舎ってことは、アイツの差し金かぁ?」
「ほう、いい面構えだ。勝負師の顔だ。親父さんの面影がある。ついてこい!」
小河原にそう言われると、明人はカバンだけを持って教室を後にした。
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