赤い薔薇の約束、白い薔薇の花束
あめはしつつじ
赤と白、どちらも黒い夜のこと
「ああ弟よ、
そんなに硬くなってしまって。
大丈夫だ、
もう恐れなくて良いんだ。
赤い?
大丈夫だ、
これは俺の血じゃないよ。
赤い薔薇の花束を胸に抱えているんだ。
お前へのプレゼントだよ。
嬉しくて震えているのかい?
寒くて震えているのかい?
温めてやるよ。
ほら、こんなに、手をかじかませて。
握れるかい?
お前は優しいな、
もっと強く握るんだ。
俺はお前を愛している。
お前は俺の全てなんだ。
聞こえるかい、
心臓の音が。
お前のためだけに、
鼓動しているんだ。
俺とお前は二人で一つなんだ。
一つになると温かいだろ。
約束だ。
俺の血と肉は全てお前のものなんだ。
胸の赤い薔薇に誓おう。
心臓も、
心も、
全てお前に捧げよう。
二人っきりの兄弟なんだから」
「ああ兄さん、
こんなに硬くなってしまって。
僕の蕾には、とても入りきりません。
昔はよくこうやって、
温め合いましたね。
寒いですか?
大丈夫、
熱くしてさしあげます。
ああ、そんなところに、
手を伸ばしてはいけません。
もっと、優しく、
柔らかく、握ってください。
指を絡めましょう、
あなたと離れたくない。
舌を絡めましょう、
もう愛を囁く必要はない。
体を絡めましょう、
心が一つになるのだから。
ああ兄さん、
あなたがいけないのです。
僕とあなたは、
二人きりの兄弟だったはず。
それがいつしか、
兄さん、
兄さん、
と、あなたを兄と慕う人が、
幾人も。
そればかりか、
ファーザーになろうとするなんて。
いけない人。
僕だけの兄さんでいてください。
僕だけの父さんでいてください。
いや、
そんなに激しくしては、
意地悪なんだから。
もっと、優しく、
柔らかく、握ってください。
爪先から脳天まで、
快楽の棘が僕を突き刺していく。
あ、ああ、
白い薔薇が咲く。
こんな、
こんなものではありません。
あなたの棺には、
ありったけの、
白い薔薇の花束を」
赤い薔薇の約束、白い薔薇の花束 あめはしつつじ @amehashi_224
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます