女子高生(16)が何故か大学生(21)である俺の家に住み始めたのだが

外狹内広

第1話

「お前……これ落としたら留年じゃね?」


「うっ」


 同じ学科とサークルに所属している、何かと縁がある友人の半羽雅人はんばまさとにそう指摘され、俺─────遠峰とおみね勢登せとはコントローラーを動かしていた手を止めた。

 

「今日もサボったとなると……もうお前一回でも休んだら単位もらえないじゃん」


「……そうだっけか」


「だって前も休んだろ?これで3回目……4回以上休んだら──────」


「期末試験の受験の権利剥奪……」


「そうなるとお前はもう単位がもらえない。イコール死ぬ」


「アアアアアア………」


 声にならない呻き声を部室内で上げるが、それを聞いているのはただ一人、雅人だけだ。

 悲しい。大学三年生になっても一度も彼女を作ることもできず、それに留年の危機に瀕している。崖っぷちだ。


「くそがっ」


「いや、お前が悪いだろ……」


「……………」


 それはそうなので何も言い返せなかった。


 

 俺の名前は改めて言うが、遠峰勢登とうみねせとと言う。

 私立のまあまあいい大学に入ることができたものの、大学受験で俺は気力を使い果たしたのか、只今絶賛燃え尽き症候群を引きずっている大学三年生だ。


 入りたかった学科に入ったのに、今ではこうしてサークルの部室にあるゲームをちまちまと進めているだけの悲しい男となってしまった。


 何か行動を起こさないといけないんだろうけど、何もする気が起きない。心の中で焦燥感が生まれるも、それが動かすエネルギーに変換できない。


「はぁ……」


「いや、ため息吐く場面じゃねぇだろ……俺が吐きたい気分だわ。俺嫌だぞ?同期が後輩になるなんて」


 それは確かに。


 まぁ、結局惰性でゲームしても何も始まらないと言うことで、俺はさっさと家に帰ることにした。今日このサボった講義以外もう講義は入っていなかったのでここにいても意味がないと判断したためだ。


「んじゃぁなぁ」


「お前そろそろ考えたほうがいいぞ〜」


 ありがたいお言葉を頂き少しだけズキっと胸に刺さった俺に代わって、ゲームをし始めた友人に別れを告げる。俺は部室を出た。


 そして学生棟を抜け、大学の敷地からも抜け出した俺は自転車置き場から自分のロードバイクを見つけてカチャリと鍵を差し込んで捻り、ロックを解除する、

 

「ヨイショっと」


 自転車を置き場から出した俺は自転車に跨り、颯爽と走り出した。だが気分は憂鬱だった。

 

 途中コンビニをみかけたが何故か寄る気になれず、そのまま素通りした。その直後に行けばよかったと少しだけ後悔したが、帰り道にもう一軒あるので今日はそっちで夜飯の弁当を買うことにすることにした。そこに売ってる弁当は他のコンビニのよりも美味しいのだ。


 そう思うだけで少しだけ憂鬱だった気分が軽くなった。が、この憂鬱の原因は自分にあるのだと思うとまた自転車をこぐ足が重くなった。堂々巡りである。


 しかしなんとか自分に鞭打ってその目的のコンビニへと向かう。


 と、次の曲がり角を右に曲がったらその目的のコンビニに着く、その時だった。


「こんにちは。遠峰さん」


「お、白戸さんか」


 突然声をかけられ、俺は自転車を止めた。そこにいたのは1人の女子高生だった。


 白戸朱火しらとあけび。俺が今入っているアパートの近くにある児童保護施設に住んでいる高校2年生である。

 彼女とはよくこの児童保護施設の近くの、今行こうとしていたコンビニでよく会う。その時にいろいろ話したりしたおかげで、こうして仲良くさせてもらっている。


 話内容は大抵彼女の学校での話が多く、まぁ言ってしまえば俺は彼女の愚痴話

に付き合っているのだ。

 その中で特に多いのが──────


「あ、聞いてくださいよ遠峰さん。私今日も告白されたんですよ」


「……今月で何度目なんだ?」


「四度目です」


 こう言う色恋話だ。

 彼女の容姿は、ぶっちゃけて言うと結構整っている。それも、俺の大学の友人の一人で、大学内で男女問わず人気のあるとタメを張れるくらい。


 学校の校則で染めてはいけないというのはないのか、綺麗な銀髪が腰まで伸びていて最初に目を向けるとしたらそこだろう。更に少しだけ丸っとした幼なげな目に小さな口、そんな子供みたいな顔のわりに彼女の持っているポテンシャル体型はその双丘が人並み以上に主張しているが、主張しすぎているわけでもない。丁度いいバランス。


 そんな彼女だからこそ高校内では人気なのだとか。その分告白もよくされるのだが、彼女曰く、


『私にはもう好きな人がいるので』


 と、断っているらしい。



 閑話休題。



 俺たちは一緒にコンビニに入り、俺は夜ご飯の弁当を、白戸さんは施設のみんなのためのご飯を作るための食材を選びに一旦中で別れた。

 そして各々目的の物を買い終わった後に外でおち合って現在話しながら帰っているところなのだ。


 そして、こうなると彼女の愚痴は止まらない。


「今日告白してきたのって、なんかサッカー部のエースっていう人だったんです」


「エース?それは凄いじゃないか」


「私自分が通ってる学校のサッカー部とか全く知らないので友達から聞いた話なんですけどね」


「んで、OKしたのか?」


「普通に断りましたよ。私前にも言ったじゃないですか。好きな人がいるって。なので、その人以外と付き合うなんて、金輪際あり得なんですよ」


「そ、そうか……」


 その言葉を強めて否定した彼女はどこか必死そうに見えたのだが、その必死さがどこか恐ろしく見えたのは何故だろう。まぁいいや。


 そうやって話していると、彼女が住んでいる施設の入り口が見えるところまでやってきた。するとそこから一人の女性が出てきた。


「あ、母さん」


「遅いよ朱火。あ、遠峰君じゃないかい。こんばんは」


「こんばんは、平風さん」


 彼女の名前は平風春子ひらかぜはるこ。施設をたった一人で切り盛りしている職員の人で、白戸さんにとっては母親的存在でもある。

 年齢はなんと70を超えているが背筋はピンとしており、とても70を超えているとは思えないほど元気。その元気さはさっきも言ったように10人を超える子供たちが過ごしている施設を一人で管理しているということからどれほどなのか分かるというものだ。


「朱火、目的のものはちゃんと買って来たんだろうね」


「うん、母さん。ほら」


「本当だ。ありがとうね。あ、そうだそうだ。遠峰君がいるんだったら丁度いいか」


「え、母さん、今その話をするの?明日にしてもいいんじゃない?」


「いやいや、遠峰君の事情とか予定とか無視して呼び出すのは良くないだろう?それに、早めに話しておいた方がいいからね」


「でも、もうこんな時間だよ?」


「…………」


 確かに、何の話をするのか分からないが、何か話すには遅い時間だ。それに、明日なら別に俺は問題などない。そもそも明日は講義が一つもないのだからな。

 そのことを平風さんに話すと、帰ってきた言葉は俺が予想していたものと思いっきりかけ離れていた。





「そうかいそうかい!だったら、明日、話し合うとしようか。



「─────はい?」



 俺は最初彼女が何を言っているのか理解できなかったのだが、少しずつ理解し始めるとその言葉のインパクトのせいか俺の脳を止めさせるには十分で、しばらくの間呆然としてしまった。









「……母さん、サプライズにするんじゃなかったの……?」


「…………あ。忘れてた」




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