第79話 望む者と望まぬ者
朝食を済ませると、この日は討伐には向かわずに、トラパーネとファミリア内の様子を見て回ることにした。
最初に訪れたのは、ファミリアの健康管理を担っているメドサンの診療所で、手が空いてるようなので声をかける。
「ご苦労さま、住民が増えると忙しいのかな?なにか要望があったら遠慮なく言ってね」
「ご苦労さまです。要望ですか……」
メドサンは要望と口にした後は、上を向きながら人差し指を口にあてながら考えてると、なにか思いついたのか、両手で『パチン』と手を叩いてから口を開いた。
「あります。診察の受付やサポートをする人と、薬を調合できる者が欲しいです」
「OK!リクルト商会に声をかけるのと、グローニャのスラム街を覗いてみるよ。他にはないのかな?医療に関係なくても良いからね」
「それなら、私は準眷属になりたいです」
朝食会から殆ど時間が経ってないのに、準眷属になりたいと言ったメドサンの言葉に少し驚いた。一時的な感情により、物事を決める性格ではないということは判っているので、決断した理由を聞いてみることにした。
「なりたい理由を聞かせてくれる?」
「はい、スラム街でドン底の生活をしてる時に、ハルカ様に救っていただいて感謝してます。準眷属になれば長くハルカ様の役に立てるからです」
「そう思ってくれるのは嬉しいよ。この先、好きな異性が現れても家族が持てないんだよ?」
「ハルカ様やトラパーネ様達が私の家族です。アグリも同じことを言うと思います。クテュールとヴェルジェの2人は家庭を築くと思いますけど」
メドサンとアグリは準眷属を望み、クテュールとヴェルジェがそんな仲だったとは知らなかったので、トラパーネと顔を見合わせ驚いた。まだまだ幼い子供だと思っていたけど、しっかりとした意思を持ってることを嬉しく思った。
「そっか、この後もアグリ達にも声をかけるから、色々と話してみるね。準眷属のことは叶えようと思うからもう少し待ってね」
「はい!ありがとうございます」
準眷属になることを認めると、可愛い笑顔で嬉しそうに返事をした。その後も農園や果樹園などを見回って色々な要望を聞いたけど、その場で準眷属についての考えを伝えてきた。
私と眷属の関係を見て、家庭を持たなくても家族はできるという考えと、愛する人と家庭を築きたいという考えに分かれて、準眷属を望む者と望まぬ者にハッキリと分かれていたのだった。
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