第66話 生きる為の選択

 リオルドは『バンッ』と机を叩いて激怒するが、私は平然として動じることはない。だって、私はヒューマンではないし、エルフ以上の長命種なんだもん。なので、リオルドに種族の優劣について質問をした。


「長く生きれることで優劣をつけるものなの?」

「当たり前だ!長く生きるからこそ、この世の理を理解して高みへと近づけるのだ」

「リオルドさんは何年生きてるのですか?」

「無礼な、様をつけて呼べ!私は350歳だ。エルフでも300歳を越えるのは数少ないのだぞ」


 そんなことを言うので、アネロに顔向けると頷いてるので本当のようだ。長命と言ってもその程度なのかと思い、私の種族を教えることにした。


「長命種というのなら、私はスライム吸血鬼ヴァンピールだから寿命の概念でいえば不死なんだよね」


 私が種族のことを伝えると、目の前の長老達は身構えた。やはり吸血鬼ヴァンピールと聞くとその存在に恐れを抱くのかな?吸血鬼ヴァンパイアと違って吸血衝動がないので、襲いかかることはないと伝えておく。


「そんなに身構えなくても良いですよ?吸血鬼ヴァンピールには吸血衝動がないので、あなた達に襲いかかることはないですから」

「そうですよ。襲うのならこのような場所で話し合いなんてされませんよ。私の話を聞いてエルフの窮地を救う為に来られたんですから、身構えずに話を続けましょう」


 アネロの言葉を聞いても半信半疑といった感じで、4人は顔を見合わせてから外に控える男達を呼び寄せた。


「交渉する余地はない!この者共を捕らえよ」

『ザッ、ザザァー』


 男達が部屋へ入ってきて、私達に剣や弓を向けて威嚇をしてきた。私はエリカ達に首を横に振ってから手をあげると、3人も続いて手をあげたので、男達は手を後ろへ回してロープで拘束してから、部屋から連れ出されて広場へと連行された。


「みなの者よ、この女は吸血鬼ヴァンピールだ。アネロは我々を裏切り吸血鬼ヴァンピールの手先となった。我々に脅威を与える者は即刻火炙りの刑で処刑する!」


 広場に連行されると直ぐに処刑の宣告を受けたけど、素直に処刑されるつもりはないので、この場に集まったエルフ達に問いかけることにした。


「リオルドが言った通り私は吸血鬼ヴァンピールだけど、脅威を与えに来た訳ではないよ。ヒューマンの迫害されて偏狭な土地へ追いやられたエルフに、生きる為の選択を提案しにきたの。この場に残って苦しい生活を続けるのか?私の集落へ来て迫害とは無縁な生活を始めるのか?好きな方を選んで欲しい」


 私が生きる為の選択を伝えると、広場は騒然な雰囲気になる。まぁ、私の言葉だけでは信じることは難しいかなと思っていると、アネロが声を張り上げて同胞達に訴える。


「ハルカ様は、ヒューマンによって人身売買で囚えられた獣人達を解放したの。そして、私の願いを聞いて隠れ里まで来てくれたのです。長老の意志ではなく、自分の意志でどう生きるかを選択して欲しい」

「ええい、黙れ!直ぐに処刑だ。矢を放て!」


 リオルドは武装した男達に私達の処刑の命令をすると、矢が放たれたのだった……

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