第4話 「一夫一婦制」の定義

って、なあに?」とテレビを見ていた咲楽さくらが聞いたので、呉碧くれあおい流の答えを教えてやった。

「日本では、一人の人に、だんなさん一人と、奥さん一人を持っていいという国の約束だよ」

「うわ…」

 ドン引きする呉紫織くれしおり。読んでいた本を落とした。

「ちなみに、君の姉の言葉だよ」

「でしょうね…」

 額を押さえている。

「結婚はしていないけれど、ムーミンの作者は、同時期に男の恋人と女の恋人が居たようだね」

「咲楽も、ムーミンかいた人みたいになる!」

 恋人はなあ、確かに男と女それぞれ居たほうが面白くはあるのだよなあ…。ぼんやり考えていると、呉紫織からにらまれた。

「咲楽は女の子だから、男の子としかつきあったら駄目とは言わないよね?」

 にっと笑う。

「うん、まあ…。そうですね。同時は、ちょっと…。でも、まあ、アーティストなら…」

 懊悩している。

「だから、君も安心して、石矢いしや君を夫に貰い受けると良いと思うよ。まだ、女の恋人枠は空いている訳だし」

「いや、別に、女の恋人は特に…」

 咲楽が食い付く。

「紫織お姉ちゃんは、月岡つきおか学園のアイドルだから、女の子は一人に決められないの」

「へえ、そうなのか」

 笑って、呉紫織を見下ろす。しばらく手遊びしていたが、突然、顔を上げる。

「あの…。ずっと気になっていたのですが、石矢先生があなたの後妻って何のことですか?」

「ああ、それか…」

 目を閉じて、高校時代を思いおこす。

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