存在しない日はない。そして俺たちは選択する。

くすのきさくら

プロローグ 車両故障

『お客様にご連絡いたします。当列車は現在異音を感知したため。車両の安全確認を行っております。運転再開まで今しばらくお待ちください――繰り返します……』


 俺。横山よこやま由悠よしひさが乗っていた電車が急停止してからしばらく。天井付近にあるスピーカーからやっと車掌さんの声が聞こえて来た。

 どうやら走行中に異音を感知。通常では聞こえちゃいけない何かの音だろう。そのため少し前に急停車。ちなみにカックンレベルの急停車ではなく。いつもよりちょっと強め?身体が傾くくらいのブレーキだった。

 現在電車はトンネル内で止まっている。そしてパンタグラフ。電車の屋根にあるひし形?今はもっと種類ある?まあとにかくあれ。電気をひいているというか。電車が走るために必要なやつが異音があって止まり。原因を探す際に電気が流れていると作業員の人たちが危ないとかの理由だろう。パンタグラフを下げたとか何とかで、今は車内も薄暗くなり。これは――非常灯?なのだろう。いつもより薄暗い明かりが付いている。

 電気が一瞬消えた際はざわついた車内だったが。今は静かになり。寝ている人も居ればスマホをいじったり。音楽を聴いたり。または何もせずぼーっと外の様子。作業員が到着したのだろう。ちらちら見える明かりの方を見ている人が居る。

 ちなみに何があったのかは俺は全くわからない。異音と聞いているが。電車に乗っていた俺は特に何か気が付くことはなかった。気が付いたらなんかブレーキが――だった。もしかすると他の車両では何か気が付くようなことがあったのかも知れないが。俺はわからない。

 というかこれ運転再開にめっちゃ時間かかるんじゃないだろうか?何時に帰れるのだろうか――と、俺は思いつつ。でも自分ができることは何もないため。座っていた席から一度立ち上がり背伸びをする。座りっぱなしは地味にきついからな。運動運動だ。


「いやぁー、ホント由悠と居るとなんか起こるな。マジで御祓い行ってきた方がいいんじゃねえか?って、神様もお手上げかもな。由悠の場合は」


 すると、俺の隣からそんな声。そして今は笑い声が聞こえてきた。

 俺はちらりと声の方を見て、『またなんか言い出したこいつ』などという視線を送りつつ再度座席に座る。

 声の主は俺の隣に足を組んで座っている磯部いそべ一心いっしんという男。一応俺の友人だ。茶髪にピアス。ネックレスと見た目はちょっとチャラチャラというか俺が地味だからか。並んで座っていると、かなり派手に見える。というか、派手だ。本来なら俺との接点はあまりなさそうなタイプ。俺とは全く違うタイプの人間なのだが――残念なことに小学校、中学校、高校。現在の大学とずっと同じの――腐れ縁?みたいなやつで、今までズルズル付き合いがあった。まあチャラくなってきたのは中学校――って、今思うとかなり前だな。なんで俺こいつとずっと接点持っているのか。改めて謎と思うが――まあ今はおいておこう。おれに見た目ほど悪い奴ではないし――でもまあ問題児?の枠かね。

 ちなみに、今日は一心に頼まれ――半ば強制的に大学の帰りに買い物やらに付き合わされた帰りだったりする。


「一心がもっと早く動いていれば最終電車になることもなく。こんな運転見合わせに巻き込まれることなく。この時間はすでに寝ていたかもしれないんだがな。確か俺は早い段階で明日もあるし帰るって言ったはずだ」

「おっと、いきなり由悠が俺に責任を押し付けて来たか」

「いや、確実に一心が原因で今に至るだろ。ちょっと買い物からの――今度の合コンのために歌の練習付き合えとかいきなり言い出してカラオケまで無理矢理連れて行ったくせに」


 ちなみにカラオケの支払いはしっかり一心にさせた。と、どうでもいい情報を言っておく。


「いやいや、ヒトカラは寂しいじゃん。ってか由悠を連れて行くとなんか起こるとは思ったが。部屋に入って一曲目――って時にいきなり停電も笑ったがな」


 ――再度どうでもいい情報だが。実は俺今日はトラブル?いうのか。まあなんか出来事に巻き込まれるのは2回目だったりする。今一心が多分思い出し笑いをしながら話しているが。カラオケに行き。部屋へと入って、一心が俺に機械取ってくれ。的なことを言ってきて、まあ俺の方が機械の近くに座ったこともあり渋々取ったら――バチン。である。何故か停電発生という。ちなみに俺たちの部屋だけ何故か電気が落ちたらしい。言っておくが俺何もしてないからな?機会を手に取っただけだ。ちなみに機械、機械言っているが。カラオケの歌を選択するあれである。


「――そんなことがあったせいで、なんかお詫びとかで時間が長くなってさらにさらに、お店を出たら誰かさんがICカード忘れたとか言って戻るしで、電車が終電になったという――」


 停電後の話を言うと俺たちの部屋だけということで、お店の人はすぐには気が付かず。俺たちがフロントへと言いに行って確認。お店の人もびっくり。はじめは何か電源が――と、思ったのかいろいろいじっていたが。付かず。しばらく俺と一心はカラオケに来たがいろいろやっているお店の人を見ている。という時間があり。ってか、あの時点で帰ればよかったな。俺なんで気が付かなかった――って、まあそのあと結局使えなかったらしく。新しい部屋をそして、お詫びやらなんやらで予定していた時間より長く使わせてくれた結果。一心がギリギリまで歌い。終電になったのだった。


「まあいいじゃん次の合コンで由悠の歌手デビュー」

「いや、行かんし。そもそも俺歌った記憶ないんだが?」


 そうそう、俺ずっと一心の熱唱を聞いて――いたか?まあ聞きながら。無理矢理連れてこられたので、一心にすべて支払いをさせる予定だったので、飲み物飲んだり食べ物つまんだりしていたという。

 ――俺、なんでこいつの歌聞いてたんだろ。今思うとホント自分の行動も謎。脱走はいつでもできた気が――いや無理か。


「歌っただろ?あれ?歌ったか?」

「歌ってない」

「なんでだよ!」

「っか、一心。ょっと静かに話せ。車内だぞ」

「大丈夫だろ。もうほとんど乗ってねえし」


 そう言いながら一心があたりを見回しながら言う。

 確かに俺たちが乗っている電車はもうすぐ終点ということもあってか。かなりお客は乗った頃と比べれば減っているが。それでもまあ十数人は乗っている。もちろん他でも話している声は聞こえるが――一心は普通の大きさというか。大きな声で話していたので俺は注意をしたのだった。

 ちなみに他の車両は――見える範囲。連結部分の窓から見えるだけだが。まあ俺たちが乗っている車両と同じか少ないくらいかと思われる。

 でも、周りの人が居ない。少ないからといって、こういう時というのか。車内で大声で話している奴と一緒――というのは何ともなので。


「わかった。俺が別の車両に避難しよう」


 俺はそう言いながら立ち上がった。


「いやいや、なんで見捨てるんだよ。寂しいじゃん」


 が。一心が俺の服を引っ張り再度座らせてきた。無駄に行動が早いというか。即手が動く一心だった。


「――さみしがり屋か」


 結局その後も一心には何を言ってもなので。まあ知っていたが。いつものことだし。ということで、俺は一心の隣に座り続けた。

 そして、そのあともちょくちょく俺が一心の声のボリュームを注意しつつ。まあ適当に話しつつ運転再開を待つのだった。

 ちなみに今この時外では何か作業をしていたのだろう。一瞬トンネル内?がパッと一瞬だけ明るくなることがあったが――ホントこの電車何があったんだろうか?何か電気系統破損した?または――動物とかと接触?あっ、それで何か電気系統が故障もあるか。あとは普通に走っていたら車両故障。っか、それだと運転再開マジで遅くなるだろうな――とかとか一心と話しつつ思っていたのだが――この時の俺の遅くなるだろうの考えは当たらなくていいのに当たったりするのだった。

 

 結局運転再開まで1時間以上かかった。何があったのかは結局わからなかったが――。

 ちなみに途中で言ったと思うが。俺たちは最終電車に乗っていた。その電車が終点近くで1時間も運転を見合わせしていたら――再開したころにはもう深夜。いや、もともと最終だから遅い時間に出発しているのだが。とにかく遅くなった。確か動き出したのは午前2時くらい。そして俺たちが降りる駅へと到着したころには、さすがに一緒に乗っていた残りの乗客にもかなりの疲労の色があったのだった。

 ちなみに一心は途中から寝ていたからか。駅に着いた頃はいつも通りだったりする。そして寝ぼけていたのか。


「――あれ?俺の切符ー切符ーねえぞ?確か財布に――」

「俺は知らないからな」


 改札の前で1人立ち止まっていたので、今度こそ俺は放置して、自分だけ切符を通し改札を抜けるのだった。


「あー、あったあった」


 まあ俺が改札を抜けてすぐに一心はまた追いかけてきたがな。

 と、俺たちにとっては、いつもの事。なんかトラブルに巻き込まれるのが多い気がするが。でもいつも通りと言えばいつも通りのある日だったのだが。

 この時俺、俺たちはとある違和感に気が付けなかった。

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