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目次
★第５５話 黒い涙
拡散していく影が
己を呼び起こして
自分の台詞（せりふ）も何故か
風が吹く夕闇の中に消えた
混乱していく心
誰かに縋（すが）り付きたくて
水面（みなも）に映した姿が
揺らいで漆黒にただ染まっていく
選んで切り捨てたものは
どのみち帰らないと言って
叫んでいたのは誰だった？
溢れるノイズ
蹴散（けち）らしていく
僕らの旅路には
まだ消えやしない夜がある
囁く声が過去を脱ぎ捨て
自分へとまた還るから
どうかどうか
この重たい枷（かせ）を外してみせて
失速していくエゴが
どこかで弾け飛んで
弱さの粒だけ
何故か残って胸元に沈む
変心（へんしん）していく意識
何かにしがみつきたくて
カオスに歪んだ指針
捩じ伏せて
海へとそっと放ってみせた
輝く光が前だけ映し
僕らを照らすけれど
僕らにはまだ未（いま）だに消えやしない影がある
零（こぼ）れる愛が夢のひとつと
今ではわかるから
この暗い罰を許して欲しい
涙を流したのは誰だった？
蹴散らしていく
まだ消えやしない闇がある
自分へと還るから
いつかいつか
この重たい枷を外してほしい
囁く声が未来を染めて
この深い罪を暴くのならば
僕はこの黒い涙を
そっとそっと
差し出そう
――『黒い涙・田井中玄』
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