かりの行方

橘花

かりの行方

白黒の銀河の写真白黒を逆さにすれば鉛筆汚れ



飛行場言葉交わさぬ人々が一蓮托生の待合場



「ごゆっくりお過ごしください」早口で言われ急いでうどん食う夏



五時起きの母は弁当渡しけり(あと二年だけお願いします)



しんぴんのかばん学ランしんぴんのじてんしゃの子はあをおいぬけり



緑なりああ緑なり教室の窓から眺む染井吉野は



曇天に眩しきばかりの緑にて矢道の芝に夏見つけたり



心よりの恋歌を詠むためにまずは知りたし恋といふもの



五月雨はえんえんとあり蕭々と雨もいっぱい降りたかろうな



最大の岩はウルルだ私が知らぬということないということ



人間は見たいものしか見ぬのだとカエサルは言ふ我は言わるる



山道のガードレールのすぐ奥のただ一株の紫陽花の花



草叢に姿を見せず虫たちの聲のみ届く そこにいるのね



蝶ですら誰のでもなく羽ばたいて私は誰のものなんだろか



壊すため作ってるのではないのにエントロピー増大の法則



家壊し土剥き出しの二十坪ぽっかり世界すこしなくなる



休日に遊ぶ友なし山頂の弘法大師お前と独り



存在証明を干むこの感情も誰かが名前をつけた



十六も暮る誰そ彼の一群のかりのはるかな行方も見えず



スマートフォン0と1との世界にて不思議なほどに君はわらへり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

かりの行方 橘花 @citrus323

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ