アサガオはまだ咲かない
具ひじ
第1話
傘から落ちる雫が登校用カバンに時々当たる。
ジメジメして、髪がボサボサになるから雨は嫌いだ。
そんな憂鬱な中、彼女は楽しそうに話してくれる。
「ねぇ、今度さ水族館行かない?」
「ん?もしかして、デートのお誘い?」
からかったら、出てくる怒り顔が可愛い。
それを鎮めるように“ごめん”となだめる。
互いの傘がぶつからないその距離感が好きだ。
その距離を離すように、あの子が何か見つける。
「ねぇ、キミ傘忘れたの?」
児童館で男の子が一人上を向いて立ち尽くしている。
笑顔を向けられた少年は悲しそうに頷く。
「じゃあ、はいこれ。」
スッと差し出された傘に戸惑いながらも笑顔で受け取る。
「あ、ありがとう……」
自身よりも一回り大きい傘を広げ走り去っていく子供を見届けながら児童館の玄関で立ち尽くす。
笑顔で雨雲を見ている彼女にスッと傘を半分差し向ける。
「どうせ予備の傘なんて持ってないんでしょ?」
図星を付かれた彼女は苦笑いをしながらピョンと傘に入る。
すると、イタズラを思いついた子供みたいな笑みを浮かべ彼女は言う。
「ホントはこうするのが目的だったりして。」
照れ隠しにプイッと左を向き、逆であって欲しい言葉を返す。
「……冗談でしょ。」
雨音響く町の中、彼女は笑顔で頷いた。
アサガオはまだ咲かない 具ひじ @guhizi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます