和音の鬱憤妄想日記⑧

「もしもし、会長。今、時間大丈夫ですか?」


 兄さんの部屋から自室に戻った私は、会長に電話を掛けます。


「ええ、もちろん。和音からの電話ならいつでも」


 会長は嬉しそうな声でそう言ってくれました。


「実は、巻頭カラーっていうのを描くことになりまして……アドバイスをいただきたいのですが」


「それは凄いわね! おめでとう。そうね、それなら絶対に露出はするべきね」


 会長の様子から本当に凄いことなのだと改めて感じます。


 それにしても、やはり露出は必要なのでしょうか?


「兄さんにも着替えを描いてくれって言われましたが、どうしてそのほうが良いんでしょうか?」


 私は疑問だったことを聞いてみることにしました。


「はぁ、どうしてわからないのかしら? いい? 女の子の裸は夢よ」


 もし、私から電話をかけていなければこの時点で切っていたと思います。


「どういうことですか?」


「普段見ることがない服の下や下着をましてや、カラーで見れることはすごく嬉しいことなのよ。喜ばない人なんていないわ」


「私は喜びませんが」


「つまり、貴女が描いている漫画はそういう人気の要素が使えるの」


 私の言葉を無視したままそう続けました。


「ところで今の言い方は、私の漫画を読んでくれているんですか?」


「もちろんよ。私の弟子であり、和音はライバルだもの」


 その言葉になんだか嬉しくなります。


「……ありがとうございます」


「なに、もっかい言ってくれるかしら? もう一度聞きたいな」


 素直に言った感謝の言葉に会長は、嬉しそうにそう言ってきました。


「もう、言いません。それでは」


 恥ずかしくなって、通話終了のボタンをタップする。


 漫画に使う資料にと下着の柄を調べてから、私は眠りにつきました。




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