優
知世
優
爽やかに忌引きした真夏の午後
駅のホームでは風が吹いていた
やっぱりここは変わり映えしないね
一つしか無い改札を出る
右に行くからねああ
タピオカ屋の後辛味のチキンが
ずぶとく居座ってる
君はいつでも優しかったし
何かにつけては譲ってて
それが重要な世の中じゃなかった
ねえ自分の席くらい確保しといてよ
バカ
ごめんね
代わりに謝っておくよ
生まれて2週間以内に
優しくあれと願われた君は
何かに殺されちゃったんだよ
知ってる?
「こんなに暑くちゃ人も死ぬよ」
そうだね、笑ってて。
地学をしに来たあのケーキ屋
1割5分ほど縮んだミルクレープ
切り取られた断層を
口に運ぶ力が残念ながらない
ほら空調のせいでさ
フォークが震えちゃうんだよね
ねえ一緒に食べたかったんだけど
バカ
私は私を許さない
「こんなに暑くて死んでごめん」
そうなの、いいよ、許すよ 許すよ
ケーキ屋に降る雨を一生許せないと思ったのは初めてだった
優 知世 @nanako1123
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