ハッピーおじさん~不幸のどん底に落ちた男、幸運値が限界突破し、姪っ子の配信でバズるも、気づかないまま規格外ダンジョンを食糧庫代わりにして最強を超える召喚獣や従魔達とスローライフ~
第025話 痛いの、痛いの、飛んでいけ(ガチ)
第025話 痛いの、痛いの、飛んでいけ(ガチ)
「にげろ~!!」
「つかまらないもーん!!」
「あははははっ」
「こっちだよ~」
マヒルたちは子供と戯れていたが、いつの間にか追いかけっこを始めた。
マヒルたちが本気を出したら、子供たちが捕まえたり、逃げるたりするのは難しいので手加減してあげている。
「もうにげられないぞぉ!! そりゃあ!!」
「キュン」
「あぁ~!?」
木の幹を背にして追い詰められた振りをしているマヒル。子供の攻撃をギリギリのところですり抜けて逃げ出した。
捕まえたと思った子供はあっという間にいなくなったマヒルに驚いて声を上げる。
「ふたりでつかまえよ!!」
「うん!!」
「「やぁあああっ!!」」
「キュン」
「こんのぉ!!」
「こんどこしょ!!」
ヨルは二人の子供たちに追いかけまわされながら、ギリギリ捕まるか捕まらないかというところを見事に演出していた。
「こっこまでおいで~!!」
「ピピッ」
ワラビモチは余裕そうに逃げる子供を、ぴょんぴょんと飛び跳ねて一定のペースで追いかけ続けている。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……もうだめ~」
「ピピィッ」
「あぁ~、つかまっちゃったぁ」
そして、子供の体力が切れて、その場に這いつくばったところで、背中に乗っかって捕まえたことをアピールした。
皆楽しそうで何よりだ。
「子供の世話をしていただいてすみません」
保護者の一人が申し訳なさそうに話しかけてきた。
「いえいえ、お気になさらず」
「子供、お好きなんですか?」
「えぇ、まぁ。私には残念ながら子供はいませんが、姪っ子とよく遊んでいましたので。それにあの子たちが今の私にとって子供みたいなものですし」
「まぁ、そうなんですね」
子供の屈託のない笑顔を見ていると、こっちまで元気が貰えるような気がする。
「まてぇ!! あっ!!」
和やかに保護者たちと話をしていると、子供の一人が足をもつれさせて勢いよく転んでしまった。
あれは痛そうだ。
「うわぁあああああんっ!!」
案の定、その子は泣き始めてしまった。俺が駆け寄って体を起こして座らせる。膝を擦りむいて、少し血が出ていた。
「キュンッ」
「キュウッ」
「ピッ」
マヒルたちが子供に駆け寄って慰めるように頬を舐めたり、色んな形に変形したりして、痛みを紛らわせようとする。
「ぐすっ……ぐすっ……あははっ、くしゅぐったぁーい」
子供はそれだけで笑顔が戻ってきた。
「それじゃあ、おじさんが魔法をかけてあげるね」
「まほう?」
「あぁ。痛いの、痛いの、飛んでいけ~」
俺は子供の膝に手を翳して、痛みがどこかに飛んでいくような仕草をした。それに合わせるように子供の膝が淡く光を放ち、どこかにビューンと飛んでいった。
「あれ~? いたくなーい!!」
次の瞬間、子供は不思議そうな顔をしながら、立ち上がってピョンピョンと飛び跳ねて、駆け回り始める。
ん? 膝の擦り傷がいつの間にか消えているな……あぁ、そういうことか!!
「ワラビモチ、お前が回復魔法を使ってくれたんだな? ありがとう」
俺はワラビモチを持ち上げて撫でてやる。
回復魔法を使えるのはワラビモチだけ。俺の仕草に合わせて魔法を使ってくれたに違いない。
「ピピピッ!?」
しかし、ワラビモチはそんなことしてないと、抗議をするように体を震わせる。
俺に花を持たせてくれようとするなんて、なんていい子なんだ。
「いやいや、そんな嘘なんてつかなくていいんだぞ。ほらほら、可愛い奴め」
「ピピィッ!!」
ワラビモチの気持ちが嬉しくて、感極まって沢山撫でて褒めてやった。
「キュッ」
「キュンッ」
それを見ていたマヒルとヨルも飛び掛かってきてもみくちゃになってしまう。
「おじさん、あしょんで!!」
「あーしも!!」
「ぼくも!!」
「あいも~!!」
「あたしも!!」
その後、なぜか子供たちに懐かれて一緒に遊ぶことになった。
子供たちは体力お化けだったけど、俺はプレイヤーになったので全然疲れていない。本当にステータス様様だ。
前の俺だったら、体中バッキバキになっていたことだろう。
「それでは、失礼します」
「ありがとうございました」
「助かりました」
「いえいえ、私もとても楽しかったです。こちらこそ、ありがとうございました」
それからしばらく遊んでいると、子供たちが電池が切れるようにうとうとし始めたので、帰ることになった。
「ばいばーい!!」
「またね!!」
保護者の腕の中で、起きている子供たちが、元気に手を振って去っていった。
子供たちと触れ合えて、とても癒された気分だ。
「俺たちも買い物をして家に帰ろうか」
「「キュンッ」」
「ピッ」
その背中を見送った後、俺たちも公園を後にした。
それから数日間、これまで働いてばかりだった時間を取り戻すかのように、のんびりゆったりと過ごすのであった。
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