第055話 ハピおじパーク(亜理紗視点)

 またおじさんがやらかしてくれた。


「付与効果なんて普通つかないんだからね!!」

「ふーん、そうなのか」

「絶対信じてないでしょ!!」

「いやいや、そんなことないぞ」


 あぁ~!! もうおじさんは本当に反応がうっすい!!


 ゲームをやらない人だったせいだろうけど、この凄さを共感できない感がどうしようもなくもどかしい。


 本来初めて造った小屋がこれほどまでに高性能になるわけがない。


 まず耐久力が999という数字があり得ない。


 初めて造ったのなら5とかにしかならない。


 何よ999って……装備でだって見たことないよ、そんな数字……何しても壊れなさそうじゃない……。


 それに、普通なら"不格好な小屋"とか、いかにも素人が造りましたよ~みたいな感じの名称と見た目になる。


 それなのに"神秘の小屋"とか意味不明だ。


 スッキリと整った見た目の上に、どことなく神聖な雰囲気を纏っている。小屋というより小さな神社みたいな神々しさだ。


 そして、付与効果に至っては付く確率は0%。


 付与効果は生産系スキルを高めている人が、スキルの自動生成を使わずに端正込めて作ることでようやく付けられる極めて難易度の高い技術。実際に付くかどうかには運の要素も大きい。


 しかも付けられるとしても1つか2つ。


 4つ付いた装備なんて売り出されたら、誰もがこぞってその商品を買い求める。


 それなのにおじさんは最初のたった1回でそれをやってのけた。おじさんのスキルが成長した時、いったいどうなってしまうのか全く想像できない。


 流石ハピおじと呼ばれるだけある。


 私は寒気を感じた。


 何を言ったところでおじさんは動じないので、これ以上言っても仕方ない。それよりも、おじさんの建築スキルを配信して、またお祭り騒ぎにする方向で行こう。


 勿論今の小屋の製作過程もバッチリ録画済みだ。『ハピおじの初めての建築』という名前でアップすればバズるに違いない。


 それはそれとして、配信の内容はどうしようか。


 ちょっとおじさんに聞いてみよう。


「おじさん、小屋の他に造りたいものはない?」

「うーん、そうだな……」


 おじさんは私の質問に少し考え込む。


「あっ。マヒルとヨル、ワラビモチのために遊具を造ってやりたい」

「それ採用!!」


 私はすぐにおじさんの案で放送することに決めた。


 可愛い子供たちのために遊具を造ってあげるというのは、視聴者に受けがいいと思うし、おじさんの異次元な幸運によって作り上げられた遊具と、それで遊ぶマヒルちゃんとヨルちゃんの姿はきっと撮れ高が高い。


 そして、好きな層にぶっ刺さること間違いなし。


 題してハピおじパーク大建築。


 やるっきゃないでしょ。

 

「え?」

「明日、遊具を造って完成させる配信やるから今から必要な材料集めに行くよ!!」

「お、おう……」


 おじさんにハピおじパークに造りたい遊具に必要な材料を確認し、すぐに皆で手分けして材料集めのために木を伐採したり、街に行って足りないものを購入してきた。


 ハピおじパークの遊具の配置と完成イメージを描いて、明日の準備は万端。


 夜は今日の動画を編集作業に勤しむ。


「きたきたきたぁ!!」


 編集が終わってアップロードすると、あっという間に100万再生突破!!


 ぐふふっ。これでがっぽり大儲け!! 明日も楽しみだね!!



 次の日。


「おじさん、もう準備はできた?」

「ああ。作りたい遊具は全部造ったぞ。後は1時間待つだけだ」

「オッケー!!」


 おじさんの建築スキルを使って完成図通りにスキルで遊具を作って配置しておく。


 マヒルちゃんとヨルちゃんに、ワラビモチとカシワモチ。そして、羊たちを集めておいてモフモフ要素もマシマシ。


 これで後は完成の少し前から撮影を始めればバッチリ。


「はーい、みなさん、こんにちは。リサチャンネルへようこそ!!」


 そして、50分程たったころ、私は配信を始めた。

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