第53話 あまりにも情けない決着
草木一本も無くなってしまった大樹海深淵部。
そこに二つの影が横たわっていた。
一つは胸部から腹部にかけて切り裂かれたような傷を負った邪竜の亡骸。
そしてもう一つは、全身やけどを負い、右腕上腕部から下を邪竜に噛み千切られ、うつ伏せで倒れているが、辛うじて息のある気を失ったクロードだ。
暫くするとクロードが目を覚ます。
「う、うう、ああ、ここまでやられるなんて……。レベルがいくら高かろうと戦い方次第では負けるっていうか、死ぬってことかぁ……。全身火傷に右上腕から下は噛み千切られるし、全身打撲というより骨があちこち折れてるよな。取り合えず最上級の回復魔法をかけて、治療しないと……」
何とか動く左手を胸に当て最上級の回復魔法を自身に掛ける。
魔法が無事に発動すると全身の皮膚と骨、右上腕より先が再生され始める。
身体が回復魔法によって再生される中、クロードは邪竜との最後のぶつかり合いを思い出していた。
邪竜も僕も真正面からぶつかり合った。
だが、やはり力に振り回されたクロードが振るった右拳は邪竜に当たることなく邪竜の胸部から腹部にかけて掠めることしかできなかった。
それでも邪竜の胸部から腹部にかけてはズタズタに引き裂かれることになったのだが、振り切った右腕を邪竜に嚙みつかれ、そのままブレスをゼロ距離で浴びせかけるという荒業にさらされることになった。
右腕が噛み千切られ、ブレスで炭化して消えていくのを見ながら反撃しようと左腕を振りかぶった瞬間に邪竜が右の翼を使って、クロードの身体を自身の前方へと跳ね飛ばすと今度はクロードの全身を焼き尽くすかのように全身全霊を込めたブレスを浴びせかけてきたのだ。
慌てて風の防御魔法を使ったが、一瞬遅く全身にブレスを浴びることとなった。
全身を焼かれながら、邪竜とクロードの距離が縮まり邪竜の勝利で決着がつくかと思われた瞬間、邪竜の態勢が崩れた。
多分、あの時邪竜は死んでいたのかもしれない。
クロードの全身を焼くブレスが止まり、すれ違うところをクロードの左の手刀で切り裂いたところで、邪竜ともどもクロードは地面に墜落したのだった。
「ほんと、戦いにもなってない。試合に勝って、勝負に負けたっていうのが本当のところじゃないか……。情けなさすぎだろうよ、僕は……。取り合えず怪我が治ったらアルテナさんのところに戻らないと……」
回復魔法で回復したクロードは邪竜の亡骸をどうするか、少し悩んだ。
はっきり言って、今の自分にとっては鉄の剣や鋼の剣では剣の方が持たないのだ。
今後のことを考えれば、邪竜の鱗や牙、革などは役に立つだろう……。
しかし、勝ち方が勝ち方だったのでどうしても後ろ暗く感じてしまう。
「ええい、なるようになるだろう」
クロードは何かを振り払うかのように首を横に振り、邪竜の亡骸をアイテムボックスに収納する。
邪竜の亡骸をアイテムボックスに収納するとクロードは肩を落とし、アルテナの待つ多重次元結界のある方向へと歩き出した。
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