最後の一人
姫様、レラ(空気)、フィリィ、俺様の4人でテーブルについた。
メイドがあっという間にお茶の準備をして背景に溶け込む。椅子を引いて座った瞬間フィリィの山がテーブルの上に乗せられた時の揺れにも一切動じず(ちなみにレラの方からは舌打ちが聞こえた)、完璧な聖女の俺様は無作法なくティーカップに視線を注いで優美な仕草でカップを持ち上げ香りを楽しむ。
アイスブレイクにお茶の感想なんて話したりなんてしちゃって、妙なキャラ付けのままぎこちなく話していたフィリィの肩からいい感じに力が抜けてきたタイミングで姫様が口を開いた。
「あと一人、現在召喚の儀の準備でここには居ませんがネリネ・ハントマン夫人を含む5人で今回の勇者パーティとします」
「まぁ!ハントマン夫人まで…!で、ですが、その……夫人は……」
「はい、既婚者です」
だよなぁ!?
俺様の燕計画で選考に上がっていた女だ。そこそこ調べた結果愛人として売り込むには夫婦仲が健全過ぎるということで辞めたが、仮にも勇者のハーレムパーティに既婚者は攻め過ぎてねぇか!?
俺様やフィリィの驚愕に姫様も軽く頷くと理由を話す。
「確かに夫人の選定は議会での選考の時点でも意見が割れ、かなりの物議を醸しました。しかし、今回あえて既婚者枠として夫人を選ばせていただきました」
「それは、いったい……」
「どうも、昨今一部でえぬてぃーあーる、婚約破棄なる略奪愛の流行りがあるらしく。万が一勇者様に特殊な性癖があった場合にカバーする事が出来るのです」
「ですがいくらなんでも夫人の旦那様に対して……」
「存在しません」
「え」
「夫人の旦那様ダーニンソン・ハントマン伯爵は、あくまでレディに既婚者という身分を与えるために作られた幻覚魔法ですので、例え夫人が勇者様と心通じ合っても正確には浮気にはなりません」
「なんと面妖な、やはり魔術師とは度し難い」
「フィリィ」
「フィリィちょうびっくり〜」
つまり……脱法既婚者……!?な、なんて都合がいいんだ……。
魔術アンチなのかフィリィが姫様に刺されて勝手にダメージを受けている。
というか幻覚魔法ってそんなことまで出来るのか!?
確かに女が魔術塔に入るには既婚者でないといけないとかいう変な規則があったが……アリバイ作りの為の幻覚ってまじかよ。
過去に退職後の就職先選考の為に神殿の間諜を使って調べたときは誰一人幻覚だと気付かなかった。
世間ではおしどり夫婦として評判でも実は死ぬほど夫婦関係が冷え切っているトルネ男爵について調べさせた時は、男爵の娼館指名娼婦ランキングから裏帳簿の隠し金庫の位置まで3日で調べてきた凄腕の間諜がどれだけ調べても夫人とダーニンソン氏は相思相愛と報告したというのに……魔術やべぇな。
「勇者パーティメンバーに求められる処女性を担保しながらも既婚者という肩書を持ち、そして何より勇者召喚の儀を執り行えるほどの魔術師であるという事からハントマン夫人が最適かと。勇者様に特殊な嗜好がなければ真実をお話すれば私達と同条件です」
処女なんだ夫人……あの100人切りしましたけど?みたいな見た目で……。
100人にどっちだと思うか聞いたら100人は非処女だと答えそうな見た目なのにこの言い切り方は、多分教会の神器使ったんだろうな。処女チェッカーの神器、真実の眼は外見から使用がバレないので割と気軽に持ち出されて使われているらしい。ちなみにその神器は女は処女性、男は童貞かを調べるもので男の処女性については判別できない。
「
多種多様〜これが多様性ってやつかなはははは。
そんなこんなで待機していたら、ついに勇者召喚の儀が始まるらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます