誕生日の最大公約数

見沼夜来

誕生日の最大公約数

塩辛い世界で生きる 僕の血は君で4倍希釈した海


今日知った仏教用語を使いたく、近所の猫に人生を説く


小説を読んで同じ年頃のあんたはどうかと聞いてくる母


人生を人生らしくするためにプランターから花を引き抜く


階段を発明した人すごいよねって坂で転んだ君の手をとる


寂しさはいつまで続く? 乾かしたシーツの端に珈琲の染み


この傘で孤独を細かく砕くだけ やむことを期待されてない雨


死ぬまでのカウントダウンはまだ始まってないと思ってたよ青い夏


誕生日ケーキの袋有料です ついでに地球も祝う3円


群青のアイスが溶ける 君の血がこの色だった夢をよく見る


また明日、君と何度も繰り返す 明日会えない時が来るまで


ごめんねと言われる度に考える 許さなければ生きてくれるか


さよならはいつもポッケの中にある 取り出さないまま洗濯をする


愛してるゲームで優勝したお前 俺が言うと照れるのなんなの


雪の日は君のことばで喋るから 少しずつ食むパンとのり巻き


真っ先に君が浮かんで俯いた 「まだ生きる希望はなんですか」


来世では路傍の草になりたいな スキップをする君を見守る


どうしても僕が知らないことばかり 雨の隙間で漂う酸素


水色の水が降るのはいつごろか聞いた僕らにだけ見える虹


生きるなら一緒にいよう誕生日の最大公約数が1でも

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

誕生日の最大公約数 見沼夜来 @taiyounokansokujo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ