脱大ブローカー 松本義志・暁美夫婦 (2)

「何、それ? どうなってんだよ? どう云う事?」

 助手席でカミさんが携帯電話ブンコPhoneで話している。

「どうした一体全体?」

「馬鹿がやらかした」

「どこの馬鹿だ?」

「ウチの弟か……その職場。何か……関係ない人まで巻き込まれてるみたいだ」

 味方に馬鹿が居るのも困りモノだが……敵が馬鹿だと、理詰めで敵の動きが読めない。

 理詰めで馬鹿の動きを読みたければ、こっちも馬鹿になる必要が有るが、それだけは絶対に御免だ。

 勝手に自滅してくれるだけなら、はなはだ結構だが……その自滅に無関係な人間を巻き込んでしまう。

 放っておくべきか……どうするか……。

「誰が巻き込まれたんだ?」

 カミさんから返って来た答は……そう言う事か……。

「騎兵隊は?」

「合法な方は……そろそろ連絡手順を変えた方が良さそうな頃合いだ。非合法な方は……1人1人は、バカ強いみたいだけど……まだ数が少ない」

「合法な方に一応連絡して……次回からは連絡手段を変えるか……。これ以上、同じ連絡方法を使うと、そろそろ足が付くんだろ?」

「ああ……」

「非合法な方は……どんなのが府内に入ってるんだ?」

「強過ぎて、逆に使い勝手が悪い奴だって……」

「九州の方で噂になってる……例の『超有能だが超問題児』の新人さんか?」

「もっと悪い……。和歌山のアイツだ」

「まさか、アイツか? なら、?」

「それが……あいつらの厄介な点らしいよ……。あの手の連中は……『魔法使い』系の連中にとっては単なる一般人と区別が付かないらしい。顔がバレてなきゃ、とんだ化物だと気付かれない。しかも……あいつの能力は……」

 冗談じゃない。

 義理の弟はクソ野郎だが……全身黒焦げになって派手に感電死したら……流石に夢見が悪過ぎる。その場に居合せなくても、一生悪夢にうなされ続けそうだ。

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