070 スパエチゼンヤの土地取得の届をした
スパエチゼンヤの施設は作ったので、あとはエチゼンヤさんの本支店の主だった人を呼んで施設見学、運営打ち合わせをしよう。なに、全部丸投げなんだけど。
土地の取得の届に行ったエリザベスさんが王宮から帰ってきた。ニコニコしている。
「面白いことになりそうよ」
だってさ。
エリザベスさんに携帯型連絡装置、ああもう携帯と呼ぼう。携帯で本支店に連絡を取ってもらい、明日打合せをすることにした。支店にはアカに迎えに行ってもらう。
管理施設の隣に僕たち用のスペースがある。そこにスパ棟を出し、本日は宿泊。リゾート旅館はまだ従業員がいないからね。スパ棟はメンテナンスフリーだから、従業員がいなくてもいつも綺麗に保たれている。
「宰相、大変です」
「どうした、ノックぐらいせい」
「それが、大変なことが出来しました。守備隊より城壁から城外を監視していたら、南に土塀が出現し、あっという間に中に木が生えて見通せなくなった。木が生える前の目測では城壁側およそ10キロ内外、南はさらに伸びているようだとの報告がありました。どのように対処すべきか問い合わせが来ています」
「またあいつらだ。本部長を呼べ」
「宰相、大変です」
「またか、ノックぐらいせい。それでなんだ」
「エチゼンヤのエリザベス様が王都城外の土地取得の届を持参しました」
「それがどうした」
「東西10キロ、南北15キロの広大な土地です」
「却下したんだろうな」
「そうしようと思ったのですが、なにしろエチゼンヤ、法律を熟知しています。王都城外の土地は囲めば囲んだ者の所有になるはずだと責められました」
「却下だ、却下」
「それが届出すればいいはずだと言われまして、確かにその通りなので」
「そんな広い土地は却下だ」
「ところが上限、下限はないはずだと、謎のオーラを出され押し切られました」
「受理したのか」
「法的に何ら瑕疵がなく受理以外のことはできません。それに鞭が飛んできそうで」
「くそ、法務官を呼べ」
「連れてきています」
「おいどうなんだ」
「今の法律では書類不備がない限り、受理しなければなりません。書類を精査しましたがさすがにエチゼンヤ、不備はありません。受理しなければ訴えられます。受理したのは当然の判断だと思います」
「下がれ。役立たず」
「どっちが」
「何か言ったか」
「いいえ、では失礼します」
「本部長はどうした」
「雲隠れしています。本部長は危機察知能力が格段に優れています。冒険者として生き延びてきただけのことはあります」
「くだらないことを言ってないで、草の根分けても探して連れてこい」
冒険者組合の本部長がなんで関係するのかと思いながらも秘書官殿は本部長を探しに行く。
おれも雲隠れしたいと呟く宰相であった。気を取り直し、秘書官を呼び、守備隊長に現地確認させよと命じた。
夕方守備隊長が報告に来た。
「土地取得届の書面によると、東西10キロ、南北15キロとありました。計測しましたところ、寸分違わず書面通りでした。文句のつけようもありません。なお東西に門があり、閉鎖されていました。南の門の上に「スパエチゼンヤ」と看板が出ており、現在建設中との札が出ていました」
「法務官を呼べ」
「建設中と札があったそうだが、何か問題があるだろう」
「私有地ですので、この国では何ら規制がありません」
「止められないのか」
「はい。それにエチゼンヤさんはこの国一の建設技術を持っています。エチゼンヤ本店はこの王宮より堅牢堅固です」
「スパとかを営業するのだろう。そっちはどうだ」
「スパと銭湯。高級リゾート旅館と高級スパを営業すると届が出ています」
「却下したんだろうな」
「見に行きましたが、とても素晴らしく、この世のものとは思えませんでした。もちろん許可しました」
「なぜ却下しない」
「あの施設を却下したとしたら、この国の店全てを営業停止にする必要があります。商業組合から訴えられます」
「商業組合はどうした」
「あそこは、エチゼンヤさんの牙城ですから。それに版画の権利とナニの卸しやらで組合に今までの年収以上の大変な収入がドカドカと入るそうですので、文句があろうはずがありません」
「ナニとはなんだ。アレか。それは大変な収入があるだろう。くそ、八方塞がりか。あとは陛下か」
「スパに行ってみたらよろしいんじゃありませんか。完成の暁には国民全て、上下貴賤全ての人たちが楽しめる施設になるでしょう」
「お前はどこを向いて仕事をしている」
「国家公務員とはすべての国民に奉仕する者です。スパエチゼンヤさんの理念は素晴らしい」
「もういい、下がれ」
「陛下のアポをとってくれ」
陛下には今日は先の国王陛下の所に行っていて不在。明日のアポを取った。
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