038 アカ、ブランコ、エスポーサ、ドラちゃんがエチゼンヤで人化する

 「エチゼンヤさん、お話しすることがあるのですが」

 「なんでしょう」

 「今回の旅は皆さんが言う魔の森の奥の禁断の神の地に行ってきました。私とアカがこの世界で目覚めた地です」


 「やっぱりシン様は神様だったのですね。アカ様が眷属神、ブランコ様、エスポーサ様、ハイヤー様が眷属ですね」

 エチゼンヤさん確信を持っているよ。あながち間違いではない様な気がするけど、どうしよう。知らんふりしてよう。


 「それで、収納袋をエチゼンヤさん、セドリックさん、バントーさんに使ってもらいたくて作ってきたのです。これになります。どうぞ」

 「これは、巾着型収納袋ですか。見たこともありません。収納といったらトランク型しかありません。もらうわけにはいきません」

 「お世話になっていますのでどうぞお納めください。巾着として使っていただければ目立たないかと思います」


 「セドリック、バントーさんを呼んでください」

 セドリックさん、走って行った。相変わらず走っている気配がない。バントーさんと戻って来る。二人とも疾。


 「バントーさん、シン様から巾着型収納袋を三人に頂きました。お礼のしようがありませんがいただきなさい」

 「収納は商売人がのどから出るほど欲しいものですが、持っている人はほとんどいません。持っているのは王と公爵程度がせいぜいです。それもトランク型のものでこの様な懐に入る収納袋は聞いたことも見たこともありません。ローコー様いただいてよいのでしょうか」

 「シン様のご好意だ。ありがたくいただきなさい」

 「シン様、まことにありがとうございます。大事に使わせていただきます」


 「その収納袋は、使用者限定機能が付加してあります。今使ってみてください。使用者登録されます」

 三人がそれぞれ収納袋に手を入れた。


 「これが入っていました」

 水筒を取り出した。

 「それは魔の森にある泉の水が入っています。少し傾ければ少し、下に向ければドーーと水が出ます。普通に使っていれば無くなることはないと思いますが、無くなったら言ってください。泉で汲んできます」


 「最初お会いした時に出していただいた水でしょうか」

 「そうです。よく覚えておいでですね」

 「あんな美味しい水を飲んだことはありません、それがこの水筒にほぼ無尽蔵に入っているのですね。恐ろしくなりました」

 「大事なお役目に役立てていただければと思います」


 三人とも起立して、それから片膝を突いたよ。どうするんだ。

 「我ら三人、神様に身命を賭してお仕えいたします。どの様な御下命も必ず成し遂げます」

 ああ、また目が据わってしまったよ。今度は三人だ。信者になってしまったらしい。ほとんど狂信者だね。


 「どうぞ、お座りください。この世界に来て、右も左もわからない私たちに手を差し伸べていただいて本当に感謝しています」

 「私どもこそ神の知識を分けていただき感謝しています。まだ版画は物になりませんが近いうちに必ず物にしてみせます」

 「ゆっくりで大丈夫ですよ」


 「それとお願いがあるのですが」

 「何なりと」

 「マリアさんを頂きたいのです」

 「セドリック、マリアを呼んでおくれ」

 「ただいま呼んで参ります」


 マリアさんがセドリックさんと来た。

 「マリア、今日限りで侍女長の任を解く。シン様にお仕えする様に」

 「はい」

 「それと、今日付で名誉侍女長に任じる。待遇は従前通り。ただし仕事、拘束は一切無い」

 「ありがとうございます。流石にお給金はいただけません」


 セドリックさんがマリアさんに言った。

 「貰っていただけると我が商会とシン様と縁が繋がっているようで旦那様も安心なのです」

 「それではいただきます。なるべく商会に還元できるように使わせていただきます」


 「それともう一つ。実はアカ、ブランコ、エスポーサ、ドラちゃんが人化できるようになったのです。とりあえずエチゼンヤさんにある服を購入したく思います」

 「やっぱり眷属神様と眷属様でしたか。セドリック、エリザベスを」


 「やっと出番ね」

 奥さん、エリザベスさんという名前だったのか。なんだか偉そう。で、どこにいたんだか。もうエチゼンヤは忍者だらけだね。


 「じゃサイズを見るわ。アカ様、エスポーサ様、ドラちゃん様はこちらにどうぞ。セドリック、アンナ副侍女長を呼んでください。あなた分かっているわね」

 「はい」


 エリザベスさんが寝室に皆んなと入っていく。

 「ブランコ様は私がサイズをみさせていただきます」

 バントーさんがブランコを控え室に連れて行った。


 アンナ副侍女長がやってきた。

 「ああ、エリザベスが呼んでいる。そこの寝室だ」


 「セドリック。何かまずかったかね」

 「そうですね。侍女の人事はエリザベス様の専権事項です」

 「そうだった」

 「結果は全く同じと思いますが、一言あるのではないでしょうか」

 「まずいぞ。仕事を思い出した」

 「それはやっておきます。どうぞごゆっくり」


 「あ、逃げられた。シン様お見苦しいところをお見せしてしまいました」

 「どこでもそうですよ。ブランコもいつもエスポーサにお説教されています」


 バントーさんが出てきた。少ししてアンナさんも出てきた。二人で店に向かった。

 すぐ若い店員に服をたくさん抱えさせて戻ってきた。

 寝室と控え室に消えて行く。


 ブランコが出てきた。偉丈夫だね。顔は少し幼さが残っているが人のよさそうないい男だ。


 ドラちゃんが出てきた。スカートを履いた幼女だ。少しきつそうな目がいいね。将来はキリッとしたボーイッシュな美女になり女の子のファンがつきそうだ。


 次はエスポーサ。若奥様だよ。人妻の貫禄がある。美人だね。ブランコがテレテレしている。


 最後はアカ。真っ赤な髪の毛だ。顔は今まで見たこともない美しさだ。神々しさ優しさと強さが同居しているね。背は180以上ある。しかも細身ながらメリハリのきいたしっかりとした体躯だ。強そう、実際強いんだけどね。首輪は謎金属のネックレスになっている。鑑札?人の世界の縛りは自然に収納行き。アンクレットはバングルになっている。二つともこの世界にはない輝きを放っている。本人の美も力も装飾品も最強だね。美神だ。あたりを払う威厳がある。


 「エチゼンヤさん。アカと申します。いつも主人がお世話になっています」

 エチゼンヤさんもバントーさんも、こっそり戻ってきたセドリックさんも顎が外れている。

 「正妻だ」

 エチゼンヤさんがうめく。バントーさんとセドリックさんがうんうんとうなずく。エチゼンヤさんハッと気がついた。

 「アカ神様、エチゼン ローコーと申します。シン神様には命を助けていただき、以後も大変お世話になっております。アカ神様におかれましても当家に泊まっていただき誠に光栄の至りです」


 エチゼンヤさんを助けたのはアカとブランコ、エスポーサなんだけど、人化の前は意識にないんだろうね。そうだろうな。強烈な魅力だ。


 エリザベスさんが出てきた。

 「マリア、側室になっちゃったわ。あなただってこの世界では傾国の美女よ。でもアカ様をみるとね。やっぱり神様よ。しょうがないわね」

 「奥様、私はそばにいられるだけで十分です」

 「大事にしてもらいなさい」

 「はい」


 「ところであなた。いつの間に侍女の人事をするようになったのですか。マリアの待遇には全く問題はありませんが」

 「それはその、その場の雰囲気というか」

 「まあ神様の前で諍いをするわけにも参りませんね。アンナ、今日からあなたが侍女長よ。表も裏もマリア同様務めなさい」

 「誠心誠意努めさせていただきます」

 「侍女の人事はアンナがやりなさい。報告だけもらえればいいわよ」


 「それと明日仕立屋のオリメを呼んでちょうだい。アカ様、エスポーサ様、ドラちゃん様の晩餐会のドレスも必要だし、ブランコ様の正装も必要だし、普段着も作らなくちゃ。シン様の正装もできているでしょうし」

 「普段着は今のでいいですよ」


 「シン様、神様に商会の出来合いを着ていただくわけにはまいりません。オリメに一世一代の仕事をしてもらいます」

 「わかりました」


 「ついでに私の大人用の服を頼んでいただけませんか」

 「え、シン様、大人になれるんですか」

 「はい」

 「バントーさん、採寸」


 「こちらへどうぞ」

 控え室で採寸されたよ。バントーさん唸りながら駆け足で出て行った。程なくして男の店員を連れて山の様に服を持ってきた。

 着せ替え人形だね。

 「これで今日のところは我慢願います。アカ様のところにもどりましょう」


 出て行くとまたエチゼンヤさんとセドリックさんの顎が外れた。外れ癖がついたんだろうか。エリザベスさんとアンナさんは涎が垂れてきた。大丈夫か。


 「ご主人様、素敵です」

 アカが並んだ。あれ僕の方が背が高い。へえそうなの。バントーさんを含め三人が平伏した。


 「シン神様におかれましては、当家にご降臨いただき誠にありがとうございます。当家を代表して感謝申し上げます」

 あ、エリザベスさんとアンナさんも平伏した。

 「できますればもう少し神威を抑えていただけるとありがたいのですが。このままですとこの辺一体が神域になってしまい、人が居られなくなります」


 「そうなの。アカどうすればいいの」

 「旦那様に神威の拡散を防ぐバリアを張りましたので大丈夫です」

 「アカはどうなの」

 「私は最初からバリアを張っています」

 「そうなんだ。気が付かなかった」

 「いいんですよ。私がやりますから」


 三人はアカ神様はやっぱり正妻だと思った。

 「ありがとうございます。楽に息が出来るようになりました」

 「お立ちください。みんな元に戻るよ」

 控え室と寝室に分かれてもとに戻った。服はありがたく収納した。

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