036 エチゼンヤ奮闘記 版画編
「セドリック、バントーさんを呼んでください」
「ただいま呼んで参ります」
版画なるものの制作はどうやって進めようか。セドリックとバントーさんと相談だが、瓶のラベルも青毒蛇ドリンク以外にも需要があるだろう。お、セドリックがバントーさんを連れて戻って来たようだ。
「早速だが今日はこれから立ち上げる新たな事業について相談したい。版画だ」
「版画とは聞いたことがないです」
バントーさんが困った顔をして言った。
「シン様の説明はこうだ」
シン様から聞いた事をそのまま説明する。
「なんとまあ。色のついたラベルが同じ様に何枚も出来るのですか」
「そうだ。一度版を作れば何枚も刷れる。いままで職人が一枚一枚手書きしていた瓶のラベルが、あっという間に何枚も何十枚も何百枚も出来上がる。それにラベルだけではないぞ。使い道は数え切れないほどだろう」
セドリックが考えた末発言した。
「もしかして、もしかしてですけど、文字も刷れるんじゃないでしょうか。書物もできるのではないでしょうか」
エチゼンヤさんは唸った。
「えらいことに気が付いたな。細かい文字は無理かもしれないが、革命が起きるぞ」
バントーさんが発言した。
「よほど秘密保持に気をつけ商売敵に漏れない様にしないと」
「バントーさん、そこなんだ。今考えているのは、セドリックとバントーさんで下絵をかける職人、木彫りが得意な職人、インク製造職人で信用できる人を見つけてきて欲しい。まずは各職一人ずつで計3人。待遇はエチゼンヤの常雇だ」
「バントーさんと取引先などそれとなく探してみます」
「頼んだよ。目星がついたら内密にワシが会おう」
その先は、そうだ。
「セドリック、屋敷の後ろの使っていない倉庫に手を入れ作業所兼職人3人の宿泊所にしてくれ。商業組合に版画の登録が済むまで職人は外出、面会禁止だ。外出、面会禁止手当はもちろん出す」
「承知しました。そちらも手配します」
「そしてもし秘密を嗅ぎつけた奴がいたら」
「あくまで影にて」
「ご下命いかにても果たすべし」
「セドリック、バントーさん、久しぶりに血が騒ぐな」
「全くです。支店にきてからはありませんでしたな」
異口同音にセドリックとバントーさんが答える。上気して心なしか背筋が伸び気合いが入っている様だ
「さてやるぞ。えいえい」
「「おう」」
「「「えいえい、おう」」」
奥さんが覗きにきて一言発して去って行った。
「いい年してバカよねえ」
☆今回は短いのでもう一話続きます。
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