私は《PRAYER|祈る者》 ~世界最強ヒーラー聖女様のダンジョン配信~

滝川 海老郎

第1話 ギフト『Prayer』

 二十一世紀。地球にダンジョンが発生して十五年。

 日本国内には二百あまりのダンジョンがあると言われている。

 最初の十年はダンジョンの攻略は難航していた。

 まず日本では銃刀法の規制がそのまま適用されたため、銃の使用が非常に限定的だった。

 刀剣類の規制はダンジョンのためなんとか規制緩和が行われた。

 猟銃のスラッグ弾が使われることはあるものの、メイン武器は剣となったのだ。


 しかしそこへ救世主とも思われる子供たちが現れ、新時代に突入した。

 なんとダンジョンが発生した以降に生まれた子供たちの中には『先天的スキル保有者』と言われる、非常に強力な技能をもつ子がいたのだ。

 それらの能力を『ギフト』、保有者を『ギフテッド』と呼んだ。

 ただ未成年のダンジョン探索は限定的で制限があるため、まだあまり活躍していない。

 高校生以上であればこれもある程度は緩和される。


 そして私は『プレイヤー』のギフト持ちだった。

 ただしplayerではなくprayer、つまり『祈る者』だ。

 ギフトはダンジョン内でなくても能力を発揮できる。


「神様、今日も一日、よろしくお願いします」


 自作の神棚のような「何か」にお祈りをする。

 私の能力は祈ることで強化されるらしいのだ。


 午前中はセーラー服を着て普通に学校へ。

 午後からはダンジョンへとパーティーを組んで冒険に行く。

 それが私たち埼玉第三冒険者高校の生徒のルーティーンだった。


 もう一つの私の顔が配信者だ。

 祈る者というギフトは信仰心を糧にするため『信者』獲得も私の能力に直結する。

 ということで四月からネット配信を始めた。

 今日のものは毎日やっている10分程度の録画配信のショート配信で、それから日曜日だけリアルタイムに長時間のダンジョン配信の生配信をしている。

 こちらは正確には時差が少しだけある。これは配信に対するグロやエロを規制するためにチェックがあるのだ。主にAIが第一段階チェックをしてアラートが上がったものを人間が再チェックする。

 再チェックでひっかかると配信停止になったりするんだよ。


 そう今、世間では空前のダンジョン配信ブームなんだ。

 もちろん一部では嫌っている人もいる。

 若い子はけっこう配信を見ていて、情報共有なんかも盛んになってる。


「みんな~今日もぱぁにぱぁに~~」


『ぱぁにぱぁに!!』

『ぱぁにぱぁに~~』

『諸君、ぱぁにぱぁに!』


「ヒーラー聖女のエルダだよぉ」


『エルダちゃん』

『エールーダーちゃーん^^』

『本日もこんにちは』

『こんこん』


「本日もミサをはじめます」

「さぁ信者のみんなも、一緒に祈ってね」


「世界が平和になりますように。神様、本日もありがとうございます」


『世界が平和になりますように』

『世界が平和になりますように』

『世界が平和になりますように』

『世界が平和になりますように』

『あーめん』

『世界が平和になりますように』


「できた? えらいえらい」


『みてるぅ?』

『らーめん』

『いえーい?』

『諸君、えらいぞ!』

『ボk、イケメン』


「今日のエルダの一言情報コーナー」

「エルダ、学校で体育があって跳び箱だったぁ。ヒーラーだけど運動はちょっと得意で、高い跳び箱もびゅんびゅん飛んじゃった、えへへ」


『跳び箱!!?』

『ブルマですか? ブルマ?』

『体操服萌え』

『跳び箱のポーズってえっつよな』


「続いては献身的な信者のみなさんのために、今日はお歌を歌うね」


「♪ライだ。ライだ。嘘はいけない♪ みんなまとめてゴミ箱にぽい♪」

「♪アイだ。アイだ。恋はいけない♪ みんな大好きお気に入りにぽい♪」

「♪全部まとめてエクスカリバーでぶった切ってやるんだから♪」

「♪みんなまとめて私にかかっておいでぶった切ってやるんだから♪」


「はーい。ぱちぱちぱち」


『ぱちぱちぱちぱち』

『パチパチパチパチ』

『88888888888888888888888』

『おつ』


「以上、お歌コーナーでした。それではまた明日でーす」


『諸君、また明日!』

『バイバーイ』

『おつ』

『諸君兄、また明日あ』

『またねー』

『おつつ』


「今日も、ヒーラー聖女のエルダの配信チャンネルを見に来てくれてありがとうございます」

「本日のミサを終了します。ありがとうございました。チャンネル登録もお願いします」


 とまあこういう感じで日々過ごしている。

 日曜日のリアルタイム配信は色々な人が見てくれるからとっても好きなんだ。


 日曜日、私はアイナとミキの三人で国迷宮135号、通称『埼玉リバーサイド』にもぐる。

 私は純白のフリフリのミニスカートのドレスみたいな服装をしている。スパイダーシルク製のそれは実は耐久性も高い中級者向けの物だった。

 聖職者っぽく錫杖を装備している。

 アイナは赤いハーフアーマーでところどころを金属鎧で覆っている。赤く塗られた鎧はおっぱいの形に盛り上がっていた。そう、彼女は巨乳ちゃんだ。

 黒鉄製のナイトソードが彼女の武器であり盾だった。

 ミキはというと黄色いレザーアーマーで下はミニスカートだ。機動力、回避力重視の魔法使いだった。

 どちらかというとロッドを装備していて魔法少女っぽい。私なんかよりもよほど配信者に向いてそうなんだけど、恥ずかしいらしく、メインを張るつもりはないそうだ。


 ちょっとだけ見た目には気を使った。お小遣いを貯めていたのをほとんど使ってしまった。

 信者さんは二十人くらい。まだまだ駆け出しだ。

 配信とダンジョン攻略でお金をまた貯めないといけないね。


 それでは埼玉リバーサイドの攻略開始です!

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