鏡のなかに咲く桜

@wakaco322

第1話 お届けもの

 桜のつぼみが膨らみ始めた頃。僕の手元に配達されてきたものがあった。大きめの封筒をサイズに合わせて折り曲げられた小包。開けば見覚えのある1通の手帳と手紙、またさらに紙に包まれたもの。

 手帳を開けばきっちり毎日更新されていて、その日の出来事が絵だったり文章だったりで書かれている。


3月14日

今日も特に変わりはありません。

空も晴れててなんとなく暖かい季節になったんだなと思っています。


「これだけ?」

 何日分かめくっても2行ぐらい同じような内容。残りの空白は落書きで埋められていた。


4月3日

検査入院でこの検査の結果次第では入院生活が始まるかもしれない。

治療をこれだけ受けても私はみんなと同じ生活を手に入れられない。喉から手が出るほど欲しくてたまらない。でも、手に入れられないと思うし、いまさら手に入れてももう手遅れな気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る