或る男

第1話

 彼は自分がどれくらい眠ったか全く検討がつかなかった。壁に掛かるアナログ時計を見たがそこから時間の概念を抽出する程の気力も彼にはなかった。心許ないシャッターを締め切った彼の部屋では常に夜が6畳一間を満たしていた。意識がはっきりし始め徐々に自分の形を思い出し、昨日と全く同じ憂鬱が彼の体の中心のあたりから分泌されていった。空腹を感じたが何かを食べて欲求を満たした後の自分に対する嫌悪を直感し、昨日肴にしていた湿気たスナックを一度強く袋越しに握り潰してから捨てた。

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