第9話 打ち明け話
「年取ったなあ! 」
「お互い様だ、何十年ぶりだもんなあ! 」
男同士はそう言いながらも、いつも会っている友人のように話し始めた。
「あの頃は入ったばっかりで、確かパイロットをあきらめたって」
「ああ、レーダー係になって」
「攻撃を受けたらレーダーを持って走るって言っていたよな」
「そうそう」
そんな話から入ったが、多くは高校時代の思い出話になった。なぜなら彼の自衛官としての立場上、現在の仕事のことを聞いても答えにくいと夫妻はわかっていたからだった。
「いやあ、実はこの辺りに高校の後輩が住んでいてね、懐かしくてうろうろしていたんだ。道が複雑で、その時も帰り道迷ってね」
「それで坂の上から来たのね」
「ええ、本当に迷ったら電話したらいいかと思って、ハハハ」
「相変わらずのんびりしているな。でも嵐を呼ぶ男かな、ほら、すごい雨になったぞ」
彼がやって来て二時間程たった頃、窓ガラスに雨が打ち付けた。
風も強くなったため
「持ってきた折りたたみ傘じゃだめそうだな」
「無理無理、強そうな傘を貸してやるよ、そのまま帰れよ」
「返しに来られないぞ、ハハハハハ」
と言いながら、彼は少しぼーっと窓を見て、ふと
「前ほど、ゲリラ豪雨が無くなったなあ」
呟くように言った。
「そういえば、ここ数年はないわね。やっぱり海流の影響だったのかしら? 」
「まあ部隊の出動も少なくて良かったんじゃないのか? 」
夫が初めて自衛隊関係のことを話題にすると、K氏は
「ちょっと聞いてくれるか、自衛隊内じゃなくて、仕事上の関係者に大変なことがあってね」
ぽつぽつと話し始めた。
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