第13話 勝負の行方と昼食
始まったよ、僕VSマリアさんの卓球対決。
フッフッフッ、マリアさんには内緒にしていたけど、中学〜大学と卓球に打ち込んできた僕は師匠やマリーナ姉さんをコテンパンにやっつけた事もあるんだよ。だから、楽勝だね!
……と思っていた勝負が始まる前の僕を叱ってやりたい……
僕はマリアさんを舐めていたようだ。その動きは前世のオリンピックでメダルを取った女子卓球会のエースたちをも凌ぐ動きだったんだ。けれども僕も卓球経験者だ。小手先の技を駆使してマリアさんを
三回戦勝負の約束で一回戦は僕が勝った。二回戦を行っている所だけど、このままだとヤバい。僕は奥の手を出す事にしたよ。
そう、ジャイロ回転サーブだ。バウンド時に大きく曲がるこのサーブは初見で対応出来ないと思った僕はサーブを打つ。僕の打ったサーブに素早く反応して対応しようとしたマリアさんは大きくカーブする球に対応しきれなかった。
「なっ! 何でこんなに曲がるの!? まさか、ハル、空間魔法を使って!?」
ちょっと待てーいっ!? 僕が不正をしたかのように言ってくるマリアさんに僕は心の中でツッコミを入れた。それから説明をしたんだ。
「マリアさん。違いますよ。魔法は使用してませんからね。これは打った球に特別な回転をかけてるんです。打ち方にコツがあるんですよ」
僕の言葉に続けてメイビー嬢が、
「マリア姉さん、ハルは魔法は使用してないですわ。使用していたら私の目ならハッキリと分かりますもの」
そう援護射撃をしてくれたよ。その言葉に恥じるようにマリアさんが僕に謝罪してきたよ。
「ゴメンナサイ、ハル。疑ってしまって……」
「いえ、誤解が解けたなら良いんですよ。それよりも、さあ、再開です!」
「次は返すからねっ!!」
そうして、僕のジャイロ回転サーブ無双で二回戦も勝った。けれども、どうしても最後の一戦をして欲しいとマリアさんに願われ、メイビー嬢からもお願いされたので、今から第三回戦を行う事になった。そして、僕は僕の出せる全てのサーブを、この試合で出し惜しみせずに出す事に決めたんだ。
「クッ、もう少し、もう少しで読めるわっ!?」
僕の全てを出してるサーブをマリアさんが対応し始めていた…… ど、どんだけ身体能力が高いんですか?
そして……
「ウワーッ!?」
僕はマリアさんが打ち返した球を返す事ができなくなり、負けてしまったよ。
内心で三回戦勝負にしておいて良かったと思ったのは内緒だよ。
「フウッ、参りました、マリアさん。素晴らしいですね」
僕がそう言うといつの間にか周りの方たちも見守っていたらしく、盛大な拍手と共に、
「凄い勝負を見せて貰ったよ!」
「卓球ってこんなに激しい運動だったのねっ!?」
「お兄ちゃん、あのサーブはどうやって打つの?」
「お姉さんの動きが早くて見えなかったよ!?」
などと賞賛と憧憬、尊敬の声が僕とマリアさんにかけられたよ。
でも、ラケットや卓球台、球からは抗議の声が……
『折るつもりかーっ! 力いっぱい振りやがって!!』とラケットが言えば、
『私に球を叩きつけたなっ、小僧!!』と台が怒り、
『痛いのよーっ、とっても痛いのよーっ』と球が泣く……
うん、取りあえずゴメンナサイって謝っておいたよ。床からも、
『力いっぱい踏み込みやがって! 抜けたらどうしてくれるんだっ!!』
って抗議されたけど、ここの床はオーガが全力で
「マリア姉さんもハルも素晴らしかったですわっ!!」
メイビー嬢がそう言いながら僕たち二人にタオルを渡してくれたよ。僕もマリアさんもやりきった感が出て笑顔になっていた。
「マリアさん、凄いですね。最後の試合は完敗でした」
「いや、二回戦目に負けた私が最後に勝てたのはハルよりも体力があったからだよ」
僕たちは互いを称えあい、卓球場を後にしたんだ。そして、お待ちかねの昼食はココだ!
【喫茶店・ジュンアイ】
ここは前世の子供の頃、親父殿が連れていってくれてた喫茶店を模して作られた内装と、コーヒー、紅茶、アルコール、軽食及びランチを作ってくれる喫茶店だよ。
ランチメニューはサンドイッチセット、喫茶店のナポリタン(ロールパン一個付)、焼き飯ランチ(スープ、サラダ付)、カツ丼とミニうどんセット、ハムステーキセット(ライスorパン、スープ付)の五つから選べるんだ。更に食後のコーヒーか紅茶を一杯無料で飲めるんだよ。
味は僕のお墨付きだよ。あっ、ちなみに地球にあった調味料はほとんどこの世界にもあるんだよ。
「私は喫茶店のナポリタンを頂きます!」
メイビー嬢がメニューに載っている写真のような絵を見てそう決めた。
「私は焼き飯ランチにしようと思う!」
マリアさんはガッツリ飯を選んだようだ。僕は……
「マスター、裏メニューお願い!」
そう言って頼んだ。そこで二人からツッコミが入った。
「ハル、ズルいですわ!」
「ハル、裏メニューとは何?」
するとジュンアイのマスターであるホーリエさんがニコニコしながら説明をしてくれた。
「フォッフォッフォッ、お嬢さん方にはまだ出せませんな。裏メニューはランチメニューを全て制覇した方に出すようになっておりますので。この街に何日滞在されるのか分かりませんが、頑張ってみて下され」
マスターからそう言われ二人は納得してくれたよ。
「そうですの…… 五つのメニューを全て……」
「ハル、何日この街に居る予定なの?」
僕はマリアさんの質問に答えた。
「僕としては明後日の朝にはテレス帝国に向かうつもりでしたけど…… どうします?」
僕の言葉にメイビー嬢は、
「そうね、マリーナ様をお待たせしても悪いですし、明後日には帝国に向かいましょう」
とキッパリ言い切った。そこで残念そうな顔になったマリアさんに僕は言う。
「帝国での生活が落ち着いたらまたこの街に何時でも来れますよ」
そう言うとマリアさんの顔にも笑顔が戻ったよ。
「そうね、早く帝国での生活を安定させてまたゆっくりとこの街に来たいわ」
マリアさんが言うとメイビー嬢も笑顔で頷いていた。
ランチは二人からは高評価だったよ。更に食後に紅茶を頼んだ二人は一口飲んで、
「!! とても美味しい!」
「この芳醇な香り、癒される!」
と大きな声で言い、マスターを喜ばせたよ。そう、紅茶もだけどコーヒーもマスターの淹れるものは王族ですら飲んだ事が無いようなものになるんだ。後継者に困りそうだけど、マスターの孫であるジュンくんが今は修行中だよ。僕からしてみると、ジュンくんの淹れるコーヒーも中々のものなんだけどね。まだマスターには少し及ばないかな?
でも真面目に修行してるジュンくんなら近い将来にはモノにすると思ってるんだ。
こうして、お腹もいっぱいになったから湯遊屋に戻って休憩する事になったよ。二人は温泉に入りたいみたいだからね。
戻ったタイミングが良かったと思ったのは二人が温泉に入ってる時に思ったよ。じゃなきゃ街の何処かでアイツと鉢合わせしてたかも知れないね……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます