第8話 バレちゃった!?

 さてと、襲撃も無かったし、僕の結界で魔物は入って来れないしで平穏な朝を迎えたよ。

 ああ、そうだ、襲撃が無いと知った方法だったよね。伝言リレーで教えて貰ったんだよ。口の悪い小石くんにね。口は悪いけど、気はいい奴だからね、小石くんは。


 僕はササッと作れる雑炊を作って朝ごはんにしたよ。流石に昨日の五合は多かったみたいで、二人とも美味しいって食べてくれたけど、半分ぐらい余っちゃったから、それを利用して洋風雑炊を作ったんだ。


 マリーナ姉さんを基準に考えたんだけど、どうやら僕の認識は間違っていたみたいだよ。マリーナ姉さんなら二合はペロリと食べるんだけどな……


「おはよう、ハル。お陰様で良く寝れましたわ。あのマットレスっていうのは画期的ですわね。ベッドよりも快適でしたわ!」


 そう言ってメイビー嬢が先に洞窟から出てきたよ。アレ? マリアさんは?


「おはようございます、メイビー様。マリアさんはどうかしましたか?」


 って僕が聞くと、


「ウフフフ、マリアったらヨダレを垂らして爆睡してますのよ。笑顔で幸せそうでしたので起こさないようにしましたの」


 と笑顔で教えてくれたよ。まあ、あのマットレスは下手なベッドよりも寝心地が良いからね。今まで緊張の連続だったマリアさんが少しでも休めるならば、このまま寝かしておいて上げよう。


「そう言えばハル、私の言葉から貴族だと分かると言ってましたわね。どうすれば良いかしら。私はもうグローデン子爵家からも放逐された身ですから平民ですわ。ですので言葉遣いを改めた方が良いと思いますの」


 なんてメイビー嬢が僕に言ってきたんだけど、僕は


「そのままでよろしいんじゃないですか? 丁寧な言葉遣いを嫌がる人は少ないですし、無理に改めなくても良いと僕は思いますよ」


 そう答えたんだ。その僕の言葉に切株椅子が反応した。


『ウムウム、そうじゃ、嬢ちゃん。そのままで良いぞ』


「ハッ、誰か他に居ますの?」


 しまったよ、僕にだけ聞こえるように話すように言っておくのを忘れてたよ。メイビー嬢はキョロキョロした後に僕を見た。


「ハル、私たちの他に誰か居ますの? 出来れば教えて欲しいのですけど……」


 ハア〜、仕方がないか…… 僕自身の失敗だしね。幸いにしてマリアさんは居ないし、メイビー嬢には秘密を打ち明けよう。


「メイビー様、これから僕が話すことをマリアさんにも話さないと誓って下さいませんか? 誓って下されば僕は話します」


 僕の言葉に少しだけ不思議そうな顔をしたけど、


「亡くなったお父様、お母様にかけて誓いますわ、これからハルが話すことをこの私、メイビーは誰にも話さないと!」


 って誓ってくれたんだ。


「それじゃ、僕の事を少しだけ話しますね。マリアさんが起きてこない内に。少しだけ長くなりますよ」


 僕はそう前置きした。メイビー嬢が頷くのを見てから話を始めたんだ。


「僕は捨て子でした。理由はこれから話す秘密に関係してると思います。タリスの街の北東部に魔鏡の森と呼ばれる場所に捨てられてました。たまたま、魔鏡の森に住む隠者だった師匠の結界内だったので、師匠に見つけられて今まで育てて貰う事が出来ました……」


 先ずは自分の境遇を話す。すると、メイビー嬢が驚いた顔をしながらも頷いて先を促してくれた。僕は師匠やマリーナ姉さんの事を話し、今までの生活について語ったんだ。マリーナ姉さんの名前が出た時にメイビー嬢がピクッて反応したけど、取りあえずは話を続けた。


「それで、ですね。僕には固有スキルがあるんですが、赤ちゃんから二歳ぐらいまではそのスキルを上手に制御出来ずに随分と師匠とマリーナ姉さんに迷惑をかけたんです」


「まあ、ハルも固有スキルを持っているのね。私も固有スキルを持ってますのよ」


 メイビー嬢が自分からそう固有スキル持ちだと僕に教えてくれたよ。


「そうなんですね。僕の固有スキルは【生命なき者との会話】なんです。例えば…… (小石くんは止めておこう。口が悪すぎる)」


 って心の中で思った途端に小石が話し始めちゃったよ……


『おう! 小僧っ子、俺様を無視しようっていうのか!?』


 仕方なく僕はメイビー嬢に話の続きをする。


「このように、メイビー様の足下の小石だったり、道に落ちている木の枝、枯れ葉、又は道自身、それからこの椅子にしている切株や馬車なんかとも会話が出来るんです…… 小石は少し口が悪いのですが、悪いヤツじゃありませんからどうか許してやって下さい」


 小石の口の悪さと僕の告白にビックリした顔をするメイビー嬢。


「まあ! 聞いた事がない能力ですわ! それに、小石が喋るなんて、いえ、それよりも切株や道とも会話が出来るって本当ですの?」


『おう! 娘っ子! 俺様が喋れないとでも思ってるのか! なんなら今、娘っ子の履いてるおパンティーの色を小僧っ子に教えてっ!!』


 そこで僕は慌てて小石を強制的に黙らせた。


「大丈夫ですからね。僕の【生命なき者との会話】は熟練度が上がって僕にだけ聞こえるように話をさせたり、僕が言いたい事を言わせたり、今みたいに黙らせたりも出来るようになってますから」


 顔を真っ赤にしたメイビー嬢にフォローを入れたけど、メイビー嬢が


「でもハルが後で自分だけ聞こえるようにして私のおパンティーの色をコッソリと聞く事も出来るんですわよね?」


 とジト目で僕に言ってきた…… いえ、そんな事はしませんからね、メイビー嬢。


「そんな事はしませんから、信用して下さいメイビー様」


 僕はそう否定したよ。するとメイビー嬢が何かに気がついたようだ。


「ハル、ひょっとしたら盗賊に襲われていた私たちを助けてくれたのもハルじゃないのかしら?」


 アリゃ、気づかれちゃったか…… 僕は仕方なく頷いた。


「まあ! でもあの時はどうやって助けてくれたんですの?」


 そこで僕は自分の持つスキルをメイビー嬢に全て打ち明けた。


「そうなんですのね、空間魔法を…… 王国にも十人しか居ない空間魔法を使えるなんて…… ハルは凄いんですのね」


 えっ!? 空間魔法って使える人が少ないの? その事に僕はビックリだよ。だって師匠だけじゃなくてマリーナ姉さんも当たり前のように使ってたから。


「あの時は本当に有難う、ハル。助かりましたわ。それじゃ、ハルだけが私にスキルを言うのは不公平ですから、ハルに私の持つスキルを教えますわね」


 そう言ってメイビー嬢は自分の持つスキルを僕に教えてくれたよ。もちろん、僕はそれを誰にも話さないと誓ったよ。 

 メイビー嬢のスキルはとても凄いものだったよ。


固有スキル

【神鷹の眼】

スキル

【裁縫】【刺突術】


 刺突剣を今は罪人扱いだから持たされてないそうだけど、僕が空間収納に入れていた師匠が作った刺突剣をプレゼントしたよ。


【隼のエストック】

 折れにくく曲がりにくい魔鋼を素材に作られた刺突剣。装備者の素早さを上げる。


 とても喜んでくれたよ。それから、罪人であると認定された経緯も教えてもらったんだ。


 どうやら王太子殿下から言い寄られたのをメイビー嬢はキッパリとお断りした所為せいで逆恨みされて冤罪を着せられたんだって。


 確かマリーナ姉さんがダルガー王国の王太子殿下は二十二歳だって言ってたけど…… そっちロリが強い人なんだね。メイビー嬢以外にも、メイビー嬢と同い年のご令嬢や、年下のご令嬢にところ構わずに声をかける人だったそうだよ……

 そしてそれを見て見ぬふりをする国王陛下に王妃殿下…… コレで未来は大丈夫なのか、ダルガー王国?



 

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