伝説の物語

ぴろわんこ

第1話二人の出会い

お城に若い、王の娘が住んでいた。城の中で過ごす単調な暮らしにも飽き、こっそりと側近の初老の男性を連れて町を散策するようになった。


いつものように町を側近を連れて散歩していると、エサを探しに町に降りてきたらしい熊が襲ってきた。町民はみんな悲鳴をあげ、逃げまどった。

王の娘と側近の目の前まで、熊が迫ってきた。二人とも足が竦んで動けなかった。


二人とも殺されるのを覚悟した時、勇敢な青年が熊の前に立ちはだかった。手近にあった棒を振り回し、熊の急所を突いて気絶させた。その後、備え持っていた短刀で首を斬りとどめを刺した。


「お嬢さん、大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」

「ええ、私は大丈夫です。助けていただいて、ありがとうございます。失礼ですが、あなたのお名前は?」

「いや、名乗るほどの者ではございませんよ」

青年は笑いながら、そう言って立ち去った。よく見ると美男子で笑顔も素敵だった。娘は側近の初老の男に、何としてでもあの青年を探し出しなさいと命じた。


翌日すぐに側近は青年を見つけてきた。青年が町を歩いているところを、偶然を装い娘は声をかけた。

「ああ、昨日のお嬢さんですか。いや、ぼくは当然のことをしたまでで、頭を下げられるほどのことでは」

「いえ、あの時あなたが助けて下さらなければ私も私の叔父も命を落としていたかもしれません。お礼をさせて下さい」

娘は側近を、あえて叔父と偽った。

「分かりました。そこまでおっしゃるなら、食事でも奢って下さい」


娘は肯いた。青年がオススメだという、飲食店へと一緒に入った。娘にとって庶民的な料理というのは初めてで美味しく感じた。

青年は話も面白かった。娘の家庭環境のことについても訊かれたが、まだ正直に身分を明かさない方がいいだろうと適当にはぐらかした。

また会いたいと言うと、青年も了承した。


そんな逢瀬を何回か繰り返しているうちに、娘は青年のことを本気で好きになったきた。青年の気持ちを確かめると、おれもあなたのことが好きだと言う。娘は思い切って、王である父にこのことを話してみた。


「平民の男なのか…」

父は難色を示した。娘が隠れてそのようなことをしていたこともショックだったが、平民の男と結ばれることを考えていることはもっとショックだった。高貴な男へ嫁がせることを考えていたのだ。


だが娘には甘い父だったし、娘の命の恩人を無下にはできない。分かった。考えておくから、今日はもう寝なさいと娘を部屋に追いやった。


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