第40話 フランス語の独特な言い回し

 フランス語ならではの言い回し。

「プチレストロン」と聞くと、小さなレストランかとうっかり思ってしまうが、どうやら「感じの良いレストラン」という意味らしい。

 小さいレストランって言いたいときも同じなので、本当は小さなレストランなのか、良いレストランなのか分からない。一体どうすれば…などと心配になる。ニュアンスなんだと思うが、私はフランス人とそんな会話をすることがなかったので、その心配は杞憂だった。


 あと、関係ないが十二時と二時が聞き取り辛い。あれ、本当にフランス人は間違えないのかな? 一度聞いたことがあるけれど、日本人とのやりとりで間違えたことあるってなったけど、フランス人同士だとわかるようだった。

 限界のあるカタカナ表記で「ドゥーズザー」と「ドゥーザー」で、音として聞き取れる自信が全くない。


 さてさて、そんな私が発音の授業を受けた時、

「パマル」と言われた。パ=否定、マル=悪い。つまり悪くないと言うことだ。

「ふーむ。まだまだだのう。まだ改善の余地があるのか…」と思って、授業終了後に改善点を聞きに行った。(熱心な学生である)

 すると、先生は不思議な顔をする。

「何か改善点が?」と聞くと、「え? パマル」と言う。

「だって、パマル」

「あぁ。ボン(良い)」とあっさり言って終わった。


 しばらくして気がついた。パマルは「悪くない」ではなく「めっちゃいいね」だったのだ。日本語ったら、「良くない」「悪くない」は最上級にはなり得ない。曖昧な位置になる。しかしフランス人の反骨精神がそうさせているのか、なぜなのか分からないが、兎角否定したがる。相手の言うことに賛成する時も「メ、ウィ」と言う。メは「しかし」と言う日本語だったら、反論する時に使う接続詞になるが、フランスでは「ウィ」と言う前になぜか「メェ…ウィ」や「バァ…ウィ」と言う。このバァはaller と言う単語だと思われるが、良く「バァ…ウィ」と言っている。意味はもはや不明。

「まぁ、そうだね」くらいかな。


 フランス語は直訳する意味とはかけ離れていたりする。生きた言葉が不思議だし、楽しいし、そして誤解も生まれる。


 フランス人は絶対謝らないと聞く。「セネパマフォー」または「セパマフォー」と言うのは「私のせいじゃない」と言う意味だ。何か店で買ったものに不備があったら「セネパマフォー」と言われるらしい。

 確かに製品の不備、不良は店の店員のせいではないかもしれないが。

 しかしそれを良く言われるので、ある時、青信号を渡っていたら、高速自転車に轢かれそうになった。

 別に驚いただけで、なんの外傷もなかったのだけれど、

「セマフォー」と言われて、さらに驚いた。

「え? あの人、自分が悪いって言った?」

 ちゃんと謝るフランス人もいる。


 そして何か画材のキャンバスだったか、友人の荷物をえっさほいさと地下鉄で運んでいた時だった。老婦人がそれを見て「オララー。大変ねぇ」と言ってきた。

 まぁ、大変だけれど、地道に運ぶしかない。なんとか手伝おうとしてくれた老婦人だったが、どう考えても私たちがえっちらおっちら運ぶしかないのだ。その婦人はあれこれ運び方を試みるが、まぁ…やはり無理だった。

 最終的に…

「サバアレ」とその夫人は言って、別れた。

「うまくいきますように」と言う意味だが、この時だけでなく、「サバアレ」は本当に良く言われたが、全て手を尽くした最後に、それはお手上げ状態で、最後の神頼みのように聞こえる。


「サバアレ」

 まるで天を仰ぐように言って、後は神のみぞ知るという言葉に聞こえる。


 フランス語を限界カタカナ表記をしていますが、意外? なことに結構カタカナで通じます。

最後にお伝えした「サバアレ」は完璧にカタカナで使えます。特に英語のようにアクセントも強くないので、明日、困った時は早速「サバアレ」と言ってみてください。

 少しは気休めになるかもしれません。

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