誰でも良いんじゃなくて君が良い

深月 アモル

第1話

私はずっと一番が欲しかった。


誰のものにもならない私だけの一番が。


例えば兄妹が居れば親の愛は半分コだし、友達だって沢山いる方が楽しいけど分け隔てなく愛を分けるなんて凄く難しい。


自分の方が少ないときは?


愛してる人ほど悲しいし、フラットな関係の人間だったら気まずいでしょ。


何があっても、叱ってくれながらでも良いからどんな場面でも真っ先に私の味方だと手を挙げてくれるそんな人。


いけない事だよと諌めながらも、無条件に私という存在だけで私を信じてくれる人。



そんな人をずっと探していたのかもしれない。



寂しがりやになったのか、元々寂しがりやだったのかは私も知らない。


ただずっと分け与えられるものの不平等さにチクチクと心を痛めていた。


たとえ自分に不足があるから、与えられる愛にも不足があるのだとしても、もしかしたら世の中に一人くらいは私を心の優先順位のトップにしてくれる物好きがいるかも?



愛をあげるのは好き。


両親だったり親戚だったり比較的、代償のない愛くれる人達には惜しみなく返したい。


貰える愛の三倍あげたっていい、愛に代金は要らない。ただ私のこと信じて愛して。


後で難しい代償を請求しないで。



嘘か本当かなんて見分けがつく訳もないし、だから愛してみなきゃ分かんないって思ってた。


私を大好きな人は大好きだし、他の誰よりも私の言葉を信じてくれたら幸せだと思った。



けれど現実って結構シビアなんだ。


求められる代償は案外大きくて疲れる。




誰かが教えてくれた。

愛されたいならまずは愛さなきゃって、


百パーセントを百二十パーセントで返さなきゃそれは本当の愛じゃないらしい。



「へぇ、それって格好いいね」


求められる代償も、嘘吐きな言葉の裏側も、細められた愛おしいと見せかける本当は笑っていない目にもどこかで気付いていたのかもしれない。


けれど信じたかった、そう思っていたかった。


「私は愛されてる」


だから、求められてる。


これは絶対に代償じゃない。市場価値でしょ?

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