イジワルな彼女

河伯ノ者

仲直りの花束

 僕の彼女はイジワルだ。

 最近は特に拍車がかかってきており、流石の僕も少々傷ついている。

 友人と楽しそうに笑う彼女の肩を叩く。でも彼女はこちらを見ようともしてくれない。

 理由はわかっている。

 あの日、僕がデートをすっぽかしたからだ。

 あの日以来、彼女は僕と口を利いてはくれなくなった。

 謝りたいけど彼女は僕を無視し続けるのだ。話しかけても肩を叩いても無視をする彼女にはホトホト呆れてしまった。

 そういう態度なら僕にも考えがある。

 まずは今日の夜メールで謝ってみよう。

 いくら彼女でもメールくらいなら見てくれるはずだ。

 メールを見た彼女は少し嬉しそうな、でもどこか申し訳なさそうな顔をしている。そんな顔をするくらいなら無視するのをやめてくれればいいのに、と僕は思った。

 返ってきたメールには「気にしてないよ」とだけ書いてあった。

 でも、次の日も彼女は僕を無視し続ける。

 二人で言った遊園地の写真を見ながら、僕はどうしたらいいのか考えた。

 プレゼントを贈ってはどうだろうか?

 手紙を添えたプレゼントならば彼女もきっと喜んで許してくれるはずだ。我ながら冴えている。そうと決まったら早速彼女の欲しがっていたアクセサリーを買いに行こう。

 綺麗な星の形をしたネックレス。淡いピンク色が愛らしく施されたソレは中学生が買うには少しばかり高価な買い物だったが、彼女の喜ぶ顔を想像したら多少の出費は必要経費だと思えた。

 可愛い彼女のことだからきっと似合うだろう。

 僕はソレを彼女の机の中にしまっておいた。

 次の日、彼女は机の中にしまわれたソレを見つけて驚いた表情をしていた。表面に着けておいたメッセージカードを見た彼女は膝から崩れて泣いている。

 でも、次の日も彼女は僕を無視し続ける。

 彼女も随分と強情だ。どうしたものかと頭を抱える僕は新たな案を模索する。

 でも、どれもこれも効果はなかった。

 相も変わらず彼女は僕を無視し続ける。

 諦めてしまおうか、そう思ったが最後に彼女に直接謝らなくては、僕の気が済まなかった。

 年が明けても彼女は僕を無視し続ける。

 春の河原で黄昏る彼女は綺麗だった。

 夏祭りで花火に照らされる横顔が好きだった。

 秋の公園を歩く彼女は何処か寂しげに思えた。

 冬に夜空を見上げる彼女は幻想的だった。

 

 あの日から一年が経った日。彼女はようやく僕に話しかけてきた。

「ごめんね、私はもう大丈夫だから」

 それだけ言うと彼女は僕に綺麗な花束を渡して立ち去った。

 君はやっぱりイジワルだ。

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