第136話 vs騎士

 ハル、カエデ、ミーレvs騎士5名。

 どんどん人が集まって来た。何事かと訳が分からず見に来た者も多い。

 そこで目にする眉目秀麗なエルフの一行。そして中央には、とんでもなく可愛いちびっ子と可愛らしい猫獣人の女の子、そして容姿端麗なエルフの女性。なんと手には鞭を持っている。超お似合いだ。

 俺もあの鞭で打たれてみたい……なんて、呟きが聞こえたり聞こえなかったり。

 鞭。そうだ、ミーレはいつもなら魔法の鞭を使う。しかし、それだと攻撃力が大き過ぎるので、今は練習用の普通の鞭を手にしている。

 そして、ハルとカエデは木で出来た短剣を両手に持っている。

 ハルは超やる気だ。堂々と胸を張って立っている。1番ちびっ子なのに態度はデカイ。


「なあなあ、ハルちゃん。ちゅどーんはあかんで」

「えッ……」

「やっぱりするつもりやったんやろ? あかんで。死んでしまうやん」

「しょうか?」

「そうやで」

「おもんねー」

「ハルちゃん、おもしろないとかと違うからな。真面目に手加減しやなあかんで」

「しゃーねー」


 カエデに注意されている。ハルの必殺技、ちゅどーん! を、お見舞いするつもりだったらしい。それは駄目。ヒューマン相手にそれは絶対に駄目。

 カエデが言う様に、騎士達を瞬殺してしまうではないか。


「舐められたものだな」


 そりゃそう思うだろう。相手はちびっ子に女子2人の3人だけなのだから。


「いやいや、舐めているのはそっちだって。ちびっ子と女だからと舐めてたら痛い目に遭うぞ」


 リヒトが騎士達に忠告している。

 ちびっ子でも、ハルとカエデは強い。ミーレだって、手加減するつもりで普通の鞭なんだ。


「いいか? 始めるぞ」


 どうやらリヒトが、始めの合図をするらしい。


「いいじょー」

「いつでもいいでー」

「リヒト様、いいですよ」


 騎士達も、おう! と声を上げる。


「よし! 恨みっこなしだぞ! 始めッ!」


 リヒトの掛け声と同時に動いたのは騎士達だ。ハル達は動かない。


 なのに……


「うわッ!?」

「どえッ!?」


 先頭の騎士団2名が前につんのめって倒れている。どうした? 何があった? 見えなかったぞ。


「ミーレ姐さん、えぐいで」

「ようしゃねーな」


 どうやらミーレの鞭で打たれたらしい。


「何言ってんのよ、来るわよ」


 それでも、立ち上がる2人。だが、その少しの間は3対3だった。


「よし、とぉッ!」


 ハルが高くジャンプし、一回転しながら踵落としをお見舞いした。


「どっしぇーいッ!」

「ぐへッ!」


 カエデは瞬時に懐へと入り込み、木剣のグリップの部分で下から顎を叩きつける。


「はいな!」

「うぐッ!」


 ミーレは無言で、鞭を足元に打ち付ける。


「うわッ!」


 それだけで、あっという間に3人撃沈だ。シュタンッと着地するハル。


「ハルちゃん、踵落としもヤバイで」

「らいじょぶら、力いりぇてねー」


 いやいや、勢いがあるじゃないか。あれは1番痛そうだぞ。ほら、騎士が倒れているじゃないか。


「くそッ!」


 そう言いながら、最初にミーレの鞭によって足止めされた2人が剣を振り上げて向かって来る。


「後は楽勝でしょう?」

「任してや!」

「おう!」


 ハルとカエデが向かって行く。

 速い。まだちびっ子なのに、2人はあっという間に間合いを詰める。

 剣を振り上げ走ってきた騎士2人は急には止まれない。

 そのままの勢いで、貰ったとばかりに剣を振り下ろそうとする。が、その前にハルが騎士の剣を叩き落とし、騎士は前に蹌踉けて膝を突いた。


「たあッ!」

「うわッ!」


 カエデは下から、騎士の剣を打ち上げた。思わず騎士は、尻餅をついている。


「そらッ!」

「うぉッ!」


 騎士2人は、ハルとカエデに剣先を突きつけられている。勝負は決まった。


「おわりら」

「楽勝やな」

「そこまでッ!」


 リヒトが止めた。

 おおーッ! と、見物人から歓声が起こる。


「そんな……一太刀も入れられないとは!?」

「だから、言っただろう? 舐めたら駄目だって」

「ワッハッハッハ! ハル、まあまあだな」

「じーちゃん、しゃーねー」

「そうか?」

「しょうら、手加減はむじゅかしいんら」

「ワハハハ。手加減か」


 長老は、まあまあだと言いながらご満悦らしいぞ。

 満面の笑みでハルを抱き上げている。


「カエデもまあまあだぞ」

「イオス兄さん、上出来やって!」

「アハハハ、そうか?」

「まあ、こんなもんじゃないかしら?」

「ミーレ、大分手加減したな」

「リヒト様、当たり前ですよ。怪我させられませんから」


 おやおや、そんな事を言っては騎士達の立つ瀬がない。


「いやはや、完敗ですな。アヴィー先生よりもお強い」

「まあ、アヴィーは戦闘に特化している訳ではないからな」

「長老様」

「ん? どうした?」


 騎士の一人が長老に向かって敬礼をした。


「魔物が入り込んだ時には、討伐して頂いたと聞いております。有難うございました」

「ああ、あの時はワシだけではない。ここにおる皆が討伐していたぞ」

「そうなのですかッ!?」

「リヒトはベースの管理者だ。エルフ族の最強の5戦士の一人だ」

「ベースの!?」


 しゃがみ込んでいた騎士達まで立ち上がって皆が敬礼をしている。


「我々は魔物に対して、なんの力にもなれませんでした。ただ、民達を避難誘導するしか術がなかったのです。エルフの皆様が居られなかったらどうなっていた事か。悔しい思いをしたものです」

「俺達は魔物に慣れているからだ。皆さんは慣れていないだろう? それは仕方がないさ」

「それだけではありません。長老様は復興の時にもご尽力して下さったと聞いております」

「それはワシだけではないぞ。この国の大公殿もそうだ。各国で力を合わせてした事だ」

「有難うございます」


 公には発表になっていない事だった。だが、口伝に知れ渡っているのだろう。




 ◇◇◇


お読みいただき有難うございます!

出来たてホヤホヤをお届けします。

大丈夫なのか?^^;

いつも有難うございます!

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